arch

猿の惑星:新世紀(ライジング)のarchのレビュー・感想・評価

3.4
旧五部作においても1つテーマだった「人と猿は何が違うのか」、言い換えるならば「猿は人間の歴史を繰り返すのか」というテーマをしっかり捉えた作品。
特に「猿は猿を殺さない」というキラーエイプ理論的な特徴的な人との差異を本作で提示して、尚且つすぐさま破壊するスピード感に驚かされる。旧五部作は中々に引っ張った要素なので、ある意味この新世紀の時点で同種殺ししてんだから旧五部作での葛藤や問題提議はなんだったんだという感じもする。


まず驚くべきは、猿のCGだろう。正直全く違和感なく、1つ種族として見ていられる。前作でもそこは変わらないが、まるでこの「猿向けのプロパガンダ映画」という体裁のレベルになっているのは、このCGのおかげに違いないのだから、改めて感嘆してしまう。

ストーリーとしてはリベラルな代表と過激派な腹心の対立によって戦争が勃発していくというシンプルな話。人間と猿、互いに守りたい息子や家族が居る構図を反復することで改めて鏡合わせにしている。また猿と人間、両者のバランス感も素晴らしい。尺だけで言えば人間側のエピソードが短い印象だが、ゲイリー・オールドマンの泣き演技を1つ入れるだけで、人間側の切迫した状況の真剣味が伝わってきていい。

人間と猿の対決シーンもかなりの映像美、猿側の直立して撃つ姿に射撃のノウハウの無さというより筋力の決定的な違いの描写としてかっこいいと感じた。

観客のほとんどが人間故に仕方ないことではあるだろうが、猿の区別がしづらない問題はある。特に、モブの猿の性別の分かりづらさは、ある意味映画言語における男性優位的な主体客体の視点が、猿には適応されないためのことだろう。

次回作がこの点などを解消して人間様が撮った映画の範疇を超えたら凄い。
arch

arch