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魚座どうしのarchのレビュー・感想・評価

魚座どうし(2020年製作の映画)
3.6
子供の時に感じた、そして久しく感じてない、あの自分より優位な立場の"大人"が、感情を剥き出しにしてくることへの恐怖をなんだか久しぶりに感じた。学校という空間と家、そこを結ぶ通学路(その街)にしか居場所がなく、そこで窒息しそうに追い詰められている2人の少年少女。
親が明確な暴力を振るっているわけでないが故に、自責の念を募らせてしまう環境が作られているし、何より躁鬱状態の落差が子供をどうしようもない状態に陥れている。

緑のことをピンクちゃんと呼ぶ母だが、名前の呼び分けでその母のテンションが計れるようになっていて、緑の「名前呼んで」がある種SOSに思えるのも上手い。

緑が教室を飛び出す為の抑圧された状態への不満は丁寧に描かれていて、対して風太も誰かを待つように同じ川で待つシーンは繰り返される。このガールミーツボーイは計算されたものであり、あのラストで終わる為にちゃんと設計されていてる。
『大人は判ってくれない』のオマージュと考えれば、その先に彼がいることには救いがある。あの出会いが根本的な解決には必ずは至らないだろうし、その点かなり雰囲気で押し通してはいるけれど、その「良くなるかも」という予感こそが「映画」に必要なんだと思わされる作品だった。


サックスのBGMと滑らかな長回しが序盤の間を持たせていて、そのことについてどの程度自覚的なのだろうとは思った。
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