このレビューはネタバレを含みます
猿の惑星シリーズは、幼稚園の頃、親父に一通り見せられて以降、今に至るまで何度も見てきました。
SF、人類進化、歴史、文明論など、僕が様々なことに興味を持つきっかけになり、その後の読書・映画体験の方向性を決定付けた作品ですから、僕のアイデンティティのかなりの部分には猿の惑星シリーズの影響があります。
今作「新世紀 猿の惑星」は、そんな僕のひいき目を抜いても、間違いなく劇場へ足を運ぶ価値のある傑作であると言えるでしょう。
ウイルスによって人口を減らした人間と、反対に知能を獲得した猿たち。
物語は、はじめからクライマックスでした。
冒頭に狩りのシーンがあるのですが、猿たちが力を合わせて熊を倒すんです。映像美もさながら、猿たちが社会性を獲得し、進化している様を描くうえで、あのシーンは最高の導入だったと思います。
人類との共存を望む平和主義のリーダーであるシーザーに不満を抱いた、コバの暴走とクーデター。それによって始まってしまった人類との戦争。
「猿は猿を殺さない」理想を掲げるシーザーですが、最終的には命乞いをするコバに対し、「お前は猿ではない」と切り捨て、コバを殺します。
理想的な社会に見えた猿社会ですが、少しずつ矛盾を抱えながら成長しました。実際には、例えばチンパンジーなどは野生でも子殺しをしたり他の猿を捕食したりしているので、「猿は猿を殺さない」は嘘です。シーザーの理想は、そもそも矛盾していたと言えるでしょう。
コバが始めた戦争は、もはや引き返せないところまで来てしまいました。人類は、シーザーという更に厄介な指導者を相手に戦っていかねばなりません。
今作の時点では、猿と人間は総合的にはほぼ互角だと思います。猿VS人間。発展しつつある種VS滅びつつある種。
人間が一枚岩でないように、猿間にも対立があります。
ドラマ性、メッセージ性、アクション、映像美、音楽など、すべての要素が素晴らしい映画でした。
次回作が楽しみです。