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ジュピターのnetfilmsのレビュー・感想・評価

ジュピター(2014年製作の映画)
3.3
 天文学者の父親と数学者の母親を持つジュピター(ミラ・クニス)は、彼女がまだ母親のお腹にいる頃に父親を暗殺され、父の顔を知らない。彼女の人生は判で押したような生活の繰り返しでしかなかった。朝は4時台に目覚め、大家族の家の掃除や家事や洗濯も全てジュピターの仕事で、彼女は人生を家族の為に浪費しているのだ。ひたすらすり減る毎日の中で彼女は父親が愛用した望遠鏡を手に入れるために卵子の提供手術を受ける決断をするのだ。「ここではないどこか」を夢見る彼女はこうして大切な何かを失いそうになるのだが、すんでのところで突如、白馬に乗った王子様ならぬ運命のヒーローが彼女の危機を救うこととなる。運命の出会いの場が産婦人科の処置室というのが何とも間抜けに見えるが、ジュピターは強靭な戦士であるケイン・ワイズ(チャニング・テイタム)に救い出されるのだ。そして信じられないことに、男は彼女の目を見ながら「陛下」とつぶやくのである。

 『オデュッセイア』と『オズの魔法使』に影響を受けた物語は、せいぜい『スペースコブラ』じゃないかと思わなくもない。本作はさながら『クラウド アトラス』内のぺ・ドゥナの挿話を更に発展させた物語にも見える。幼い頃から孤独を背負い、何をやらせても普通の女子はケインとの出会いから突然、先代女王の生まれ変わりとして、地球を所有する権利を有していると知らされるのだ。普段、簡素なジーンズに身を包んでいた彼女は、突然ドレスアップした自分の姿に戸惑う。それと同時に男勝りに見えたミラ・クニスが徐々に綺麗になっていくから不思議だ。退屈だった日常は突然、1秒先すらわからないようなジェットコースターのスペース・オペラに巻き込まれるのだけど、それにしても王家の醜い争いの渦中に巻き込まれる様はいささか性急過ぎる。イケメン王子様のエディ・レッドメインに求愛される彼女は普通なら素直に受けとけば良いものを、ウォシャウスキー姉妹はここでもイケメンよりも野獣男のチャニング・テイタムを選ぶのだ。『ルパン三世 カリオストロの城』を想起させる花嫁の奪還から200億の予算の大半を費やした怒涛のVFXに行くのだけど、思いの外地味な展開で『マトリックス』再びとはならないのが残念だ。
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