とんこつたろう

ソロモンの偽証 前篇・事件のとんこつたろうのレビュー・感想・評価

4.0
中学生が司法制度を理解する過程をハブいたのは裁判という行為への説得力に欠けるが、間延びへの防止策とすれば納得の添削。キャラクター像を掘り下げることでカバーもできている。

脚本の魅力も去ることながら、この作品で最も着目すべき点は出演する子役たちが誰をとっても主演に耐え得る完璧な演技力を持っていること。主演を努める藤野涼子にとっては今回がデビュー作だが、名だたる俳優たちを前にしても微動だにしない貫禄があり、邦画の未来を担う大女優の風格が滲み出ている。表情、口調、間の取り方どれをとっても処女作とは思えぬ存在感!

安藤玉恵扮するヒス教師(彼女もまた燻し銀の名女優)と教育の在り方で対峙するスピーチは、今年の日本映画におけるベストシーンといっても過言じゃないだろう。あの数分は彼女にとって人生のターニングポイントであり、各映画祭で新人賞を総ナメする決め手にもなったはず。

この藤野涼子という少女はズルすぎるくらいにヒロイズムが溢れている。日本映画が昭和時代に置いてきた古き良きカリスマ性が帰ってきたような、そんな安心感すら憶える。

藤野涼子

とんでもない"女優"が現れた。