odyss

マンデラ 自由への長い道のodyssのレビュー・感想・評価

マンデラ 自由への長い道(2013年製作の映画)
3.8
【マンデラの半生を知るのに恰好の作品】

マンデラ映画がまた一つ。
すでに『マンデラの名もなき看守』や『インビクタス 負けざる者たち』といった秀作が作られていますが、これも悪くない映画です。

上に挙げた作品とは異なり、マンデラの半生をきっちりたどっているところが、本作の特徴です。
弁護士として、差別されている黒人の味方となって闘い、やがて暴力闘争に関わるようになる。これも、長年におよぶ非暴力闘争が実を結ばなかった結果であり、最初から暴力路線に共鳴していたわけではありません。

そして裁判の結果終身刑となり、普通の刑務所ではなく、島に設置された苛酷な環境の刑務所に送り込まれ、27年間を過ごすことになる。

女性関係についてもちゃんと描かれています。最初の妻との関係、二度目の妻との関係。二度目の妻とは反差別運動の同志でもあったわけだけれど、長年の刑務所暮らしをへて、関係にはそれなりに変化が生じるというところもよく分かるようになっている。

全体としてオーソドックスな手法がとられ、細部についてはもう少し突っ込んで欲しいところもありますが、バランスのよい作品になっている。アフリカの景色も魅力的。

最終的にアパルトヘイトは解消され、マンデラは大統領になりますが、報復を恐れる白人側に対して、黒人が復讐をしないように呼びかける。ここが、彼の偉大なところだと思う。報復の連鎖を回避し、国としての統一性を作っていくことが大切だと知っていたのです。『インビクタス 負けざる者たち』でもその点はしっかり描かれていましたが、この映画で改めてマンデラの慧眼に感動した私でした。

なお、チャドウィック監督は『おじいさんと草原の小学校』の監督でもある。アフリカ・ケニアの独立運動やその後が描かれた作品です。未見の方には合わせてお薦めします。
odyss

odyss