カフカさん

マンデラ 自由への長い道のカフカさんのレビュー・感想・評価

マンデラ 自由への長い道(2013年製作の映画)
4.5
「私は自由への長い道を歩んだ。それはとても孤独な道だった。まだ終わってはいない。私には分かる。私の国は憎しみのためにあるのではない。生まれながらに肌の色のせいで他者を憎む者などいない。人は憎むことを覚える。ならば愛することを学べるはずだ。なぜなら愛というものは人の心にとって、ずっと自然だから」(ネルソン・マンデラ)


【あらすじ&感想】
南アフリカ共和国元大統領ネルソン・マンデラ(1918~2013年)の骨太な伝記映画。彼の自伝が原作となっている。

南アフリカ共和国の白人政権によるアパルトヘイト(人種隔離政策)を撤廃し、黒人の権利を獲得するために闘ったネルソン・マンデラ。
弁護士時代から、黒人の指導者として頭角を表す時代及び27年間に及ぶ獄中生活を経て、大統領に就任するまで(1994年)を描いている。


ネルソン・マンデラについて知ることができる良い映画だと感じた(マンデラを描いた他の映画は見ていないが)。
と同時に、南アフリカ共和国の情勢や国際世論についても描かれているので勉強にもなった。

他方、この映画はマンデラの私生活も描いており、等身大のマンデラであるという印象。
彼がプレイボーイであり最初の妻がいる時に不倫をしたり、妻に暴力的になったりする姿。また、家庭を顧みずに黒人の運動や会合に参加する姿…。つまり、彼を「アパルトヘイト撤廃のために闘った英雄」としてのみ描いていない。この点も面白かった。

2番目の妻であるウィニーとの関係も細かく描かれている。
マンデラが27年間も投獄されていたため、夫婦の時間はほとんどなく、孤独な時間の方が長かった2人。心では通じ合っていたけども、方針の違いも相まって、あまりにも孤独の時間が長すぎたのかもしれない。
あと、ウィニーはマンデラの妻ということでプレッシャーを感じていたのかもしれない。また白人への態度という点を巡って、2人は大きく対立することになる。
またマンデラが妻のみならず、娘たちに長年触れられなかったのも辛かっただろうなぁ…。

南アフリカと言えば、アパルトヘイト問題で「白人 vs. 黒人」という図式を想像していた。 だけど、「黒人 vs. 黒人」の対立も描かれていて興味深かった。
暴力路線か、和平路線か。一時は非暴力路線から暴力を伴う路線へと方針を転換したマンデラ。しかし、彼は最終的には白人との和平路線へと立場を変える。
そのため、妻を始めとした武闘派路線の黒人とは対立することになる。実際、前述の通り、黒人同士が争い血が流れることもあったようである。

白人に復讐をしたいという強硬派路線の気持ちも分かるけど、白人との共存というより現実的な路線を選んだマンデラの方が正しかったと思う。
だけど、マンデラが釈放されたり、世界的な南アフリカ批判が起こったのは、マンデラという指導者が不在の時にも闘っていた妻たちのおかげでもあるのかもしれない。

マンデラは人種に関係なく、全ての人のための南アフリカ共和国であるべきと言った。そして、白人に復讐はしないと言い、赦すことが大切だと黒人に訴えた。当時の状況でここまで言い切るのは凄いと思った。

マンデラを演じるイドリス・エルバとその妻ウィニー役のナオミ・ハリスの演技や老けメイクが凄かった。特に晩年のマンデラは威厳があった。

また、マンデラの側近や仲間も描かれている。マンデラの仲間に、黒人ではないインド系移民の子孫がいたのは初めて知った。彼もマンデラとともに運動に参加し、投獄されていた。

総じて言えば、ネルソン・マンデラや黒人側の運動の光の部分だけではなく、闇の部分にも触れられていた印象。

エンディングのネルソン・マンデラを称えたU2の“Ordinary Love”も印象的だった。
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