マーベルコミックスから選ばれた作品を映画化した本作は、マーベルらしさもディズニーらしさも兼ね備えた素晴らしい出来栄え。
ここで言う"マーベルらしさ"とは成長と正義のこと。
天才少年のヒロは"オタクっぽい"学問には見向きもせず、お金を賭けるロボットファイトで遊んでばかりいた。しかしそんな彼も悪と対峙する中で自分自身と向き合い、本当に正しい行動を取ることができるようになっていく。
チームが団結し、メンバーは個性を活かし、1人では勝てない強大な相手に連携して打ち勝つ、まさにお手本のような展開だ。
作中ではヒロと悪役が鏡写しのような構造になっており、ヒロが乗り越えるべき壁としての役割を果たしているのもマーベルらしい。
ベイマックスを発明し身を挺して人助けをしたタダシ(正しい)と、彼の意思を受け継ぎ大人になったヒロ(Hero)。この兄弟のネーミングもバッチリ。
これに対して"ディズニーらしさ"とは支える存在のこと。
最も身近で頼れる存在であるタダシを失い、なかなか立ち直れないヒロ。そんな彼を見放さなかったのは大学の友人達と家族、そしてタダシの形見でもあるベイマックスだった。
落ち込んだ時は励ましてくれて、強がってしまう時にはなだめてくれる存在は誰しも必要だろう。
悪を倒すことよりも悲しみから立ち直ることがストーリーの中心であるのも重要なポイントだ。それがベイマックスのケアロボットという設定につながり、この作品で1番の特徴にまでなっている。
あと見ていて気がついたのが、ヒロが落ち込んでいるときは左に前向きなときは右に向かって進んでいる事。画面の明暗やカメラワークはダイナミックに変化してアクション映画調だが、ディズニーお得意の繊細なキャラクター描写は健在だ。
最後に、MCUのように複数の作品で世界観を共有せず単体で成立しているが故の王道展開がとても心地良かった。
主人公が若く素直な性格だからこそ、ストレートな内容が似合う作品になったと思う。
5人(と一台)の見た目も性格もバラエティ豊かで飽きさせない。人数は多くてもかけ合いが良くできていて、なおざりにされているキャラはいなかった。
オープニングからエンディングまでアクションシーンはどれをとってもカッコよくて、テーマだけではなく作画そのものの出来も抜群にいい。
改めて見返して正解だった。とても好み。