よつゆ

卍 まんじのよつゆのレビュー・感想・評価

卍 まんじ(1964年製作の映画)
4.2
助監督として溝口健二の作品に参加した増村保造の監督作。
増村保造作品は初鑑賞。

溝口の『祇園囃子』などで主演を務めた若尾文子を主演に据え、溝口とは大きく異なったアプローチで、"女性"を描く。

女性同士の同性愛を含め、女性の開放的な性を映していて、禁欲的とも言える溝口とはまるで対照的である。
そんな情熱的かつ感情的な作品づくりにはどうやら彼の学んだヨーロッパ映画に背景があるらしいが、やはりその影響は激しいのだろう。
しかも若尾文子を起用している点などからも、溝口など、それまでの時代の日本映画への対抗心を少し感じる。

性と愛と愛憎。
若尾文子演じる光子を取り巻く全てが混沌と化して恐ろしい。
光子への愛はもはや信仰の域に達している。
それは決して比喩でも何でもなく、文字通り観音さまと光子を同一化し、崇拝し、最期は…。

何故園子は駄目だったのだろうか。
はっきり言って難しすぎてなんだか分からない。
単純に光子の分の薬だけミスったなんて馬鹿な話はないだろう。
同性愛と異性愛との間の違いなのだろうか。
どれだけ愛が深くあろうと、自然の摂理に相反する同性愛は、男女間の性愛にはどうしようなく敵わないのだろうか。
ひとまずはそう解釈した。
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