このレビューはネタバレを含みます
見捨てられたと思っている人たち
過去のしこりが重くのしかかって、それぞれに思いあぐねているのか
ぶつけてぶつけられて流れたのは、血と汗と涙と、それ以外のなにか
他に方法はなかったのか
きっとこれしかなかった
これがあって良かった
そう思えるほどの渾身の時
言葉も映像も多くを語らない中、どんどん物語に引き込まれていく
中盤からはとにかく肩に力が入りっぱなしで、観賞後は映画を観ていただけとは思えない疲労感に襲われることとなった
ただひたすら男たちが殴り合うだけ
叫ぶ代わりに容赦なく拳を叩きつけるだけ
だが、その姿に背景が見える
悲しみも憎しみも後悔も、受け止めきれないほどに迸っている
そんな竜巻のような作品
兄弟二人の役作りに敬服
特に弟の屈折した内面を言葉少なに体現するトム・ハーディが素晴らしかった
ただし、経験者とはいえ素人相手に闘っていた男が頂点に立つという展開には、いまひとつ納得できず
ニック・ノルティが醸し出す、自業自得の憐れさよ
孤独な老いぼれを簡単に救済しないラストが好きだ