芦塚あきひろ

ミスターGO!の芦塚あきひろのレビュー・感想・評価

ミスターGO!(2013年製作の映画)
3.6
ゴリラは大好きな動物だったりする。上野動物園では、後ろ姿しか見せてくれないゴリラをしばらく眺めていたことがある。聞く所によると、脳梗塞から生還したゴリラだったとか。背中が渋かった。

この映画のゴリラの扱いは、残念ながらかなり不当だと思う。
人間の都合で虐待と言っていい扱いを受けても飼い主に尽くす姿は健気だが、周りの人間がゴリラそっちのけで勝手にドラマを演じているから白けてしまった。これなら、ゴリラを敵役かなんかの設定にすればいいのに。ゴリラの魅力で言えば、『キングコング』や『ランペイジ』や、ましてや『新・猿の惑星』シリーズには遠く及ばない。

『ミラクル7号』以来のシュー・チャオは、成長したなあ、と思うが、この映画ではゴリラから与えられる愛と献身に1割くらいしか応えられていないキャラクターになってしまっていた。これは脚本や演出の問題だろう。

後半、韓国野球で大活躍するゴリラたちを日本の中日と巨人が取り合う展開が加わるが、中日側の代表は何故かオダギリジョーが演じている。愉快なキャラクターだったが、ゴリラを欲得でしか見ていない人間が1人増えただけという印象。

トゥサンベアーズをはじめ、野球チームの名前は日韓とも実物のものを使い、ゴリラ以外の野球シーンもリアルで迫力があった。
それに、ゴリラのCGのクオリティはかなり高いと思う。ゴリラは素晴らしい。
それだけに人間ドラマの添え物のような扱いが本当に勿体無い。なんでこんなバランスにしたのか。
思う存分暴れるゴリラをたっぷり見せて、上映時間を100分以内に収めたら、だいぶ面白く見られたはずだ。
ゴリラのカッコよさと気高さの前では、人間なんかどうだっていいのだ。
芦塚あきひろ

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