鹿江光

リスボンに誘われての鹿江光のレビュー・感想・評価

リスボンに誘われて(2012年製作の映画)
2.5
≪50点≫:人生の分岐点に立たされる。
主人公がもっと話の主軸に被ってくるのかと思いきや、終始ナビゲーターのような立ち位置で、その辺りが少しだけ拍子抜け。
突然出会った1冊の本に導かれるように、独裁政権下のポルトガルという激動の時代に生きた若者たちを追い、やがてその運命に心奪われていく。無意味な歯車の毎日を過ごす彼にとって、当時の世界はまさに夢のようであり、同時に脅威であった。命を賭して懸命に生きてきた彼らを目の当たりにして、そこにどうしても自分の姿を重ねてしまう。「果たしてこの自らの人生に何の価値があるのか」という、人生存続の危機に直面する。
美しく、そして重たく流れていくリスボンの風景。作品自体も決してパワフルなものではないが、不思議と吸い込まれていく魅力がある。ラストも思ってたものと異なり、意外とあっさり終わっていった。でもその最後の一言には、主人公を人生の分岐点に立たせるような選択が提示されている。難しいことは考えずに脅威の世界へと身を投げ込むか、歯車の保身を持ち続けるか、彼の人生はラストカットから始まる。
鹿江光

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