阪本嘉一好子

ログアウトの阪本嘉一好子のレビュー・感想・評価

ログアウト(2011年製作の映画)
5.0
日本のアニメや韓国のBTSのような中性的な黒髪の男子生徒出てきて、目の周りに化粧をしているので、それが、デスノートの主人公のように見える。そのうち、なんだか、裕福でポーランドの上流階級で、宗教を信仰していない。核家族でも、それぞれ親子が別で、夫婦自体にも亀裂が入っているような家庭の子供、それがドミニック。強烈!


この監督の『聖なる犯罪者』を観て感激した。そして、他にどんな作品を作るんだろうと気になって、この映画を観た。
https://filmarks.com/movies/87047/reviews/101221889

何しろ映画の現実とネットのアニメ世界の構成が気に入ったし、現在の問題点である、ネットでの虐めや自殺や不登校、それに、家族の崩壊など、グローバル化されて、どこの国でも起きている/起きうる課題にアニメの要素をいれている。ネットの世界に入り込んでいって、友達を見つけるという発想がアニメをあまり見ない私にとって、カッコよく見えた。それに、オペラのシーンが出てくるが、ここでおこることが、映画でおこるとなっているようだ。

それも、私立の金持ちの子弟が通う、エリート高校が設定であるようだ。過去には共産国であってナチスの虐待で生命も失った人が多いポーランドである。ポーランドが資本主義国家になって、また、それにグローバル化の拍車がかかり、広範囲において良いことも悪いことも崩れていく一編をここに見た気がする。ローマンカトリックが宗教の伝統に固執し、現代人の心から離れ、人々は昇進、野望、快楽などの世界にのめり込んでいく。のめり込めず、何か一歩、変わっていたり、踏み外した(?)と思えるような行動を取れば、このようにどんでん返しがくる。ドミニックにはそれを元に戻せるチャンスがなかった。両親は、それぞれ自分の名声や忙しさにかまけてドミニックの心のケアーをしてあげていなかった。ドミニックは家族といても一人ぼっちだという気がしていると思う。ドミニックは学校で友達を作るどころか、ゲイたと言うことで、いじめの対象になって動きが取れなくなってしまった。誰だって、誰にもサポートされない世界に住んでいるのは辛いよね。

結構気に入ったシーンがたくさんある;その一つとして、オペラを家族と、ミニスターの家族と見に行くシーンがあるが、ミニスターの娘とドミニックをデートさせようというシーンだ。ドミニックは自分はゲイだという。そして、男の裸の彫刻にキスをするシーンがある。その後、車のなかで、母親はドミニックはゲイじゃないと。父親はそうであっても黙っていると。そして、自分の昇進のために、ドミニックはそれをぶち壊したというシーンがある。他にもこういうようなシーンがある。精神科の医者に相談しているときだって、この両親にとって。学校に行って目先の期末試験を受けて、将来成功してもらいたいということしか頭にない。ドミニックが手を切って自殺しようとしたというのに、この意味を理解しないというか最初の医者のいうことは全てが正しく私には聞こえ、いま、ドミニックの両親が考えなければいけないことだ。バーチャルの世界に入り込んでいることも、両親は認めない。たわごとだよ思っている。自分の思うように行かないから、医者を変えると言っている。両親は医者じゃないんだよ。それに、ドミニックのことをほっぽっているからわからないんだよ。そして、自分のエゴで、ドミニックの気持ちになってあげていなく、ああでもない、こうでもないと言って、自分の見識だけで物事を見てるんだよ。ドミニックは心が傷ついて、バーチャルの世界にいるシルビアだけにしか自分を告白できないんだよ。

実を言うとこういうタイプの日本人女性から、その女性の娘について相談を受けたことがある。娘は燃え尽き症候群のようで何もしたがらないが、大学に行くために勉強をしてもらわないと困ると。私は直接娘に会って話していないが、ドミニックの両親のように彼女が決める。『精神的にダメになったら、大変だよ。大学なんか一年遅れて入学してもいいんだよ。精神的にダメになってしまったら、大学にもいけないよ。』といっても、ただ、私に話すだけで、自分の都合のいい助言しか聞かない。この映画をみながらこの母親を思い出したよ。

最後のシルビアの雄叫びにはショックだった。シルビアは実在の人物でドミニックとおんなじだったんだ。ドミニックの最後の言葉『ママ!』

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