ナカシマ

紙の月のナカシマのネタバレレビュー・内容・結末

紙の月(2014年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

恵まれた家庭で育ち、真面目に生きてきた梨花はどこかで抑圧されていたのだろう。旦那ともすれ違っている。そんな時に出会った光太との逢瀬の終わり、朝帰りをしたときに解放されたのだ。真面目な彼女にとって、倫理から解き放たれた瞬間だった。ただ、悲しいかな、彼女が彼を喜ばせるために、彼女自身が認められるために思いついたのは人のお金をくすねることしかなかった。幼少期にシスターからある意味で裏切られてしまった原体験が、彼女の中でお金をただの紙に、偽物に変えてしまっていた
「偽物なんだから壊れたっていい、壊したっていい、怖くない。そう思ったら体が軽くなったみたいで」。そうして「行きつくところに行ってしまった」。

それでも何が梨花を数千万の横領をするほどにまで駆り立てたのか、その過程がもう少し描かれていればと思う。変わっていくのは分かったが、変化が急で少々腑に落ちなかった。

月を指でかき消すシーン、椅子で職場の窓ガラスを破って逃走するシーン、そして彼女の「解放」の過程を少しだけ羨ましそうに眺める隅。これらのシーンはとても印象が強かった。最後、彼女が少女の頃に、募金とともに文通していた彼に再開し、彼が売っていたリンゴをかじって立ち去る(無銭飲食!)シーンは、どう言葉にすればよいかまだわからない。
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