櫻イミト

サロメの季節の櫻イミトのレビュー・感想・評価

サロメの季節(1984年製作の映画)
2.5
オスカー・ワイルドの有名戯曲「サロメ」(1893)を下敷きにした”魔性の少女”系のフランス映画。主演は「私生活のない女」(1984)のV・カプリスキー。原題「L'année des méduses:メデューサ(クラゲ)の年」。

ブルジョア家庭の18才クリス(V・カプリスキー)は、例年通り母と一緒に夏を南仏コート・ダジュールで過ごしていた。かつて父親の友人との情事で堕胎を経験した彼女は、男性に対して屈折した思いを抱きつつ奔放に弄んでいた。そんな中、母に言い寄る女衒の男マロンだけは彼女になびかなかった。。。

冒頭からドイツ・パンク界の女王ニナ・ハーゲンの「ローレライ」(1983)が鳴り響く。他にも数曲ニナ・ハーゲンがかかり、本作のヒロインがエキセントリックでパンクなキャラクターであることを印象付けている。

ヒロインは序盤からトップレスで登場し、全編を通して裸同然のシーンが多い。しかしガッシリとした体格に物怖じしない態度のためエロスは感じられず、裸一貫で男との戦いに挑む戦士のように見えた。一方、音楽のぶった切りや途中から何度も入る監督のナレーションはヌーヴェルヴァーグ演出をパロっているようにも思え、挑発的な姿勢は何となく感じ取れた。

しかし致命的なのが、ヒロイン役のV・カプリスキーが無表情すぎて頭が空っぽに見えてしまうところ。宣伝文句では”B・バルドーの再来”などと謳われていたが、もしバルドーが主演していたら本作のレベルは比較にならないぐらい上がった事だろう。

結果的には久々に聞いたニナ・ハーゲンの力強いボーカルが最も印象に残る、空回りした感じの一本だった。「象牙色のアイドル」と同じボックスに入っていたので鑑賞。
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