マクガフィン

ソロモンの偽証 後篇・裁判のマクガフィンのレビュー・感想・評価

2.9
男子生徒の転落死により動揺が広がる中学校内で、生徒たちが自主的に行う校内裁判の様子を活写する映画。原作未読。

自分自身を客観的にとらえ始められる、14歳の少年少女たちの多感な時期に自主的な校内裁判を行う設定が良い。不安定な気持ちを裁判を通してさらけ出す描写は役者の演技と熱量と相まって、重厚さと説得力がある裁判は凛とした初々しい空間が漂う。

だが前編のギミックは殆どなく、事件の背後にある様々な真実を明らかになっていくが校内裁判の範疇に納まることに。柏木くんは宙ぶらりん。これほど周りを巻き込んだ裁判を推し進めた神原くんの理由は中二病的で唖然とし、物語としても共感できない。それぞれが事件をどう受け止めて乗り越えていくかが大切なことなのに、前編の序盤に『校内裁判以降のいじめが全くない』と大風呂敷を広げる発言の説得力は皆無に。

藤野涼子ら少年少女の演技や佇まいは素晴らしいが、永作博美は消費者金融のイメージがこびり付き女優としては致命的。清水尋也の服装や髪形は80年代のアメリカのヤンキーみたいな雰囲気で、もはやギャグにしか見えない。