明石です

デカメロンの明石ですのレビュー・感想・評価

デカメロン(1970年製作の映画)
4.0
*清書中。

「夢の方が素晴らしいのに、なぜ描きつづける?」

中世イタリアの叙事詩『デカメロン』を原作に、イタリアの鬼才パゾリーニがお得意の快楽描写をたずさえ映像化した、半分コメディな文芸映画。ベルリン国際映画祭の銀熊賞を受賞したとか。性と快楽を謳歌する「生の三部作」へと踏み出した記念すべき第一作目で、ユーモアと艶っぽい笑いに満ちたテイストは、当時相当受けたらしい。という、持ってまわった書き方をしてるのは、私があんまりハマれなかったから笑。私はこの「生の三部作」をあまり賛美できない、おそらくパゾリーニのファンとしてはあるまじき種類のファンなのかもしれない。

私の知る限りパゾリーニの映画の登場人物たちは、いずれも取り憑かれたように死へ向かっていく人々が多いように思うのだけど、本作はそんな概念はまるで存在しないかのように、生きることの中に我を忘れている。これは、デカメロンという小説が、そもそもペストの災禍を逃れてきた人々の艶笑譚という点を考え合わせるとより奇妙なことで、そういう背景を汲むとなお、この監督が、意識的に「死」という概念を遠ざけているように思う。だから「生の三部作」なのか?自分でそう名付けてるくらいだし笑。

二作目『カンタベリー物語』ほどにあけすけな快楽描写はなく、色遣いも控えめ。パゾリーニ映画の彼の映像の美は極彩色のそれではなく、もっと精神的なものです。白黒映画だった初期の『アッカトーネ』や『マンマローマ』にあった真実らしい詩的精神のようなものが、少し見えづらくなっているのが個人的には難点かと思った。パゾリーニ自身が育ったローマの貧困地域の真実を描いたほぼ自伝っぽいあの辺りの映画が私の好みにはグサグサと刺さる。ひとえに言って、アートすぎるんじゃこの映画は。

あとこれは超個人的な好みの問題だけど、私はオムニバス映画や、群像劇という形式があんまり好かぬ。本作や『カンタベリー物語』に限って言えば、原作が、小話を積み上げてひとつの作品になってるそもそもの時点からしてオムニバスっぽい形式なので仕方ないとしても、オムニバスや群像映画を見るなら、1つの話にまとまった短編映画を複数見たいなというのが滅茶苦茶な本音。ただ各話は普通に面白かったので、原作の『デカメロン』も(高校の世界史で習って以来、長らくタイトルしか知らなかったやつ)ちゃんと読んでみようと思う。

パゾリーニ曰く、本作は「私の中で初めての演じられた映画」であり、「映画とは遊びであることがわかった。これほど単純なことに気づくのに、私には十本の映画が必要だった」とのこと。

本当どうでもよくてごめんなさいなんだけど、主演の一人でジャケットにも写ってるフランコ·チッティ、ザ·フーのロジャー·ダルトリーに激似で驚く。『カンタベリー物語』で見てダルトリーじゃないことは(調べて)確認済みなのですが、それでも改めて、似過!とたまげてしまった。
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