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ショート・タームのmasuのレビュー・感想・評価

ショート・ターム(2013年製作の映画)
4.2
問題を抱えたティーンエイジャーをケアするシェルター「ショートターム」でケアマネージャーとして働く20代の主人公が、子供達に寄り添いながら自身の問題とも向き合い成長していく話。

主人公のコミュニケーション方法は、徹底的に寄り添うというもの。
彼女は、傷ついている子供達の状況を把握して、彼らの心情を察するのが上手い。それは彼女もかつて虐待を受けていて、同じ境遇にいたから。

過去のトラウマに悩まされる主人公が、同じ境遇にいる女の子を救おうとする中で、自身も他人の介入を阻んでいた心の壁を破り、過去のトラウマをひとつ乗り越える展開に泣いた。

他人には介入できない領域があって、それは同じ苦しみを持った相手にしか晒け出すことは難しい。この映画の中では、苦しみを背負った人に対し、無理に相談に乗って力になろうとするのではなく、ただ寄り添っている。
脱走しようとする子供を毎回走り回って追いかけているし、無断で抜け出し家に帰ろうとする少女には一緒に付き添いただ側にいる。それがきっと相手を一番救うコミュニケーションのあり方だろうなあと思った。

印象に残っているシーンは、
少年がラップで自身の心境を吐露する場面と、少女が自身の置かれた状況をサメとタコの童話に例えて話す場面。
子供達が間接的に苦しみを訴えていて、彼らのバックグラウンドや苦悩を想像すると辛くなった。

重いテーマを扱いながらも、コメディも加えて90分という短い尺で、バランス良くまとめた素晴らしい作品。
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