尿道流れ者

薄氷の殺人の尿道流れ者のレビュー・感想・評価

薄氷の殺人(2014年製作の映画)
4.2
時は1999年、バラバラにされた死体が各地の工場で見つかるという猟奇的な事件が起こる。それから5年後、またしてもバラバラにされた死体が発見され、解決にいたらなかった事件がまた新たな動きをみせる。

サスペンスとしてはあまり大きな動きもなく、雪に覆われた道に残る足跡のように朧げでありながらも着実に残る痕跡を辿っていくようにゆっくりとうつむいたまま進んでいく。
そんな地味とも言える物語に色をつけるのが一人の男と一人の女。どうしようもなく女に惹かれてしまう男と愛することも愛されることも罪になる女。二人の想いは宙ぶらりんのまま近づき、離れる。男は男として盲目に女を追いかけるが、警察として被疑者である女の真相にも目を向けてしまう。そこでの葛藤に打算的な解決を持たない主人公の不器用さがとても良い。

この二人の感情のブレが映像に大きく出ているところがとても映画的で美しい。美しいスケートシーン、氷の上で対照的な動きをする二人。主人公の踊りや寂しげな表情。見た目も美女と野獣といった二人に流れるロマンティックで感傷的な時間。うわっ、良い映画!って感じ。
その反面、暴力描写はとてもドライで唐突に描かれる。殺伐とした銃撃シーンと後味の悪さはたまらない。

白昼に上がる花火、決して綺麗なものではなく、雪で覆われた白い街では映えるわけもない。感情まかせに暴力的に打ち上げられる大量の花火は、時に悶え苦しむように地上に炸裂し、時に青空に吸い込まれるように消えていく。美しくはないが、人の心を打つ。

美しい映画という宣伝だったような気がするが、荒々しく剥き出しのままのエモーショナルな映画として心に残った。