グラビティボルト

薄氷の殺人のグラビティボルトのレビュー・感想・評価

薄氷の殺人(2014年製作の映画)
3.7
正直、邦題が宜しくない気がする。
終盤印象に残るのは氷とは真逆のものだ。
冒頭、「切断された手の視点」から始まる辺りからして才気がみなぎっているし
それを運ぶトラックや工場の駆動音の身も蓋もなさが恐ろしい。
事件を追う刑事がトラウマを負う銃撃は
引き続ける構図と役者の置き方が北野武風だったり造り手の好みと素質を感じさせる。
女に惑わされ、女も無自覚に惑わしてしまうノワールなプロットは日本だと石井隆を感じさせるがこの映画は彼女の撮り方が一番面白い。
「生身/身体」を感じさせる撮り方がほぼない。
登場シーンは顔を手で覆っていて見えず、簾越しに脚が見える。彼女の脚が見えるのはこのシーンのみだ(美しいのに!)複数ある濡れ場でも頑なに服を脱がさないし何より驚いたのは主人公が彼女と話すきっかけになる「やけど」を一切魅せない所。
クリーニング屋のカウンターを捉えた構図は一切変化がなく、只二人を引いて捉えるのみ。
多分そうした生身の色っぽさを撮らない、雨が降らないノワールであるが故に
「寒さ」と「雪」が付与されてる映画だと思う。