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ゼロの未来のparsifal3745のネタバレレビュー・内容・結末

ゼロの未来(2013年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

かなり刺激的な作品。現代社会を基に、未来社会を予見したかのような作品。巨大なAIが人間の社会の隅々にまで浸透し、個々人を適切に管理しようとしている。より多くの利益を生み出すために、AIによって様々な職業が作られ、あてがわれ、目標時間を示され、ゲームをクリアするかのように人々は駆り立てられている。まるで、我々を取り巻く社会を風刺しているかのよう。コーエンが行うゲーム自体は、プログラムされたものを、こなしているだけ。創造性などは問われていない。
 コーエンは、修道院の廃墟に住み人生の意味ややりがいのある仕事を与えてくれる電話を待っている。周囲の人は、すべてプログラム通りに動いていて、作為を持っている人たちであり、彼の問いに対して意味を持たない人たち。だから付き合わない。そこで、彼に対して、マンコム社から大きな仕事、ゼローTが与えられる。ゼロの確率が、100%であると証明するような仕事のよう。時間内に複雑な数式のパズルのブロックを当てはめ続けるもの。自室で行っても良い仕事だ。自室は、元は修道院で、キリスト像がかけられているが、頭の部分は監視カメラに置き換えられている。過去において意味を与えていた宗教は、AIの管理に置き換えられているということだ。
 コーエンを気にかけてくれる、若い煽情的なベインズリーも、AIによって作られた電脳的な仕事をしている。実際に接触して、情欲を想起させて、その後は電脳空間で疑似的な男女関係によって癒しを与える仕事。しかし、不器用で純粋なコーエンによって、心を動かされたのか、すっぴんになって彼の修道院を訪問し、どこか知らない所に二人で逃げようと誘うが、彼は自分が信じる使命を優先し、彼女の誘いを断った。長い間の洗脳というのは、なかなか解けないのだ。現代の男が、女性よりもゲームやコンピューター等に夢中になっていることへの皮肉か。
 AI管理者であるマネジメントの息子が派遣され、マンコム社のシステムを暴露しながら、病んでしまった彼を救い、ミッションを続けさせようとする。ネズミに餌を与えるのが、何かを意味しているのだろうがわからなかった。コーエンが、彼を時間通りに返すというマンコム社のルールを破ったために、マンコム社からのゼローTのプロジェクトは破綻、周囲の人たちも解雇される。
 ベンズリーへのアクセスアイテムを使って、自分とAIを接続させたら、仮想空間内にマネジメントが出てきて、コーエンの部屋の監視動画が映る。コーエンは神経ネットの一部であり、マネジメントは、人生の目的に対する答えは持たないこと、自分は真実を求めるただの人間だと告げる。そして、「真実は、封じ込められた混沌(カオス)である。終末は始まりと同じ混沌。無を追求したい理由は、混沌=無秩序とは商機であり、金になる」からと告げる。そして、コーエンに対しては、神を信じたがる人間は、より崇高な目的を求めるあまり、人生が無意味に思えてしまう。そして、全てが永遠への通過点でしかなくなる。コーエンが選ばれた理由は、信念の人であり、商売とは無縁だったから。商機を広げる何かを提供してくれるかもしれなかったからか。
 コーエンは、電話が意味のある言葉を伝えるのを待って、無意味な人生を送った。コーエンの存在理由はなくなり、彼へのプロジェクトは終了。彼は仮想空間でカオスへ身を投げる。ベンズリーと行った仮想空間の海岸で一人、夕陽を見ながら平穏が与えられる。
 人生の意味は、自分で勝ち取らなければならないって言われているかのよう。AIやアプリ、商売をする人たちに頼ってしまってはダメだよって。でも、これから先の未来は、どこからが自分の判断で、どこからがプログラムやマニュアルなのかが難しい社会になりそう。いや、もうなっているのかも。
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