黒田隆憲

6才のボクが、大人になるまで。の黒田隆憲のネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

劇場で2回、サブスクで1回、そして今回が4回目。

12年間少しずつ撮りためていったこと自体ももちろんすごいのだけど、例えば「イラク戦争」の映像だとか、オバマ当選前のある種の「狂騒」だとか、スター・ウォーズの続編ネタで盛り上がるところだとか、後に振り返ってその時代の「アイコン」となるべき現象を、リアルタイムで撮っているということの凄さに改めて脱帽した。後から「記号」として再現するのとはワケが違う。リンクレーター、やっぱりただものじゃない。

あとは、メイソン役の男の子がここまで役者として「いい顔」になることも、6才の時点で予測してたのなら恐ろしいことだよね。

音楽の使い方も本当に、本当に上手い。Wilcoの「Hate It Here」をかけながら、メイソンを連れ「男2人」のドライヴを楽しむイーサン・ホークの気持ち、ビートルズの『ブラック・アルバム』をメイソンにプレゼントして、その曲順のこだわりについて車の中で熱弁を振るうイーサン・ホークの気持ち。母元を離れ、大学の寮に入るため荷物を積んで車で出発したメイソンの、開放感と不安感が入り混じった気持ちに寄り添うような、ファミリー・オブ・ザ・イヤーの「Hero」。もちろん、オープニングで流れるコールドプレイの「Yellow」も、エンディングで流れるアーケイド・ファイアの「Deep Blue」も完璧。無性にドライブしたくなったなあ。

毎度のことながらメイソンの母親の男運の悪さと、アメリカ男性のマッチョイズム・プレッシャーについても考えざるを得なかった。

今回、声を出して笑ったのは、イーサン・ホークの再婚相手のお父さんが、メイソンにショットガンをプレゼントするところ。ゴリゴリの民主党支持者だったイーサンが、ゴリゴリの保守主義者の娘と結婚するとか「人生――!」って感じです。あと、水道工事業者の「伏線回収」は、すっかり忘れてたから鳥肌が立ちました。

そしてやはりラストシーンがとにかく好き。「時間というのは途切れない。一瞬は常に〈今〉あるものだ」というメイソンの台詞には、なぜリンクレーターがこんな途轍もない時間と手間をかけてこの映画を作ったのか、そこで言いたいことは何だったのか、その意味が凝縮されているのと同時に、我々の人生そのものについても見事に言い表している。

僕にとって、特別な映画です。
黒田隆憲

黒田隆憲