監督はリチャード・リンクレイター。
『スクールオブロック』の人ね。
内容はタイトル通り、6才の男の子が大人、正確には18才なるまでの12年間を描いた映画。
『トイストーリー3』といい、アメリカは大学行くタイミングで家を出て自立するのが通例らしいらしいね。
ただ、この映画は、実際に12年かけて同じキャストで撮った作品！
このポスター観て「あら可愛い子役」と思ったら、12年前の姿である。
男の子だけじゃなくてその両親とお姉ちゃんの4人が12年同じ役を演じてる。
日本で言うと『北の国から』みたいな感じ。
ただ、『北の国から』はテレビドラマとして1話ずつ刻みながら撮っては放送してを繰り返して結果的にここまで積み重なりました。という作品だけど、本作は毎年夏休みに集まっては撮ったのを12年分撮り貯めてから一本の映画として一気に放出するという前代未聞の作品。
だって監督が選んだこの子も将来どんな風に成長するのか分からないし(ハーレイ・ジョエル・オスメントですらあの様だし)、途中でキャストが病気や事故で亡くなったら全部パアになる。
12年なんて何が起こるか分からない。
だからこうやって出来上がった事自体が奇跡である。
この映画が公開されたのが、2014年だから、逆算して2002年には撮り始めた事になる。『スクールオブロック』が2003年なのでその時点で同時進行で撮ってた事になる。
同じ俳優で撮った事によってどうなるか？
さっきの『北の国から』で言えば、純が成長する過程を子供の頃からずっと追って観てる視聴者は、純、及び彼を演じる吉岡秀隆を「大きくなったなぁ…」と勝手に親戚の子供みたいに感じてしまう。
それと同じで、この映画を観てる内に、自分ももうこの家族の親戚みたいな感覚になってくる。
この感覚は同じ俳優で演じ通さないと生まれない。
主演の男の子メイソンを演じるのはエラー・コルトレーン。元々アメリカのCMなんかに出てたのを監督が抜擢。
お父さんはイーサン・ホーク。『ガタカ』に出たり、既にリンクレイター監督の他の映画にも出ている。
お母さんはパトリシア・アークレット。『トゥルー・ロマンス』のヒロインやってた人。
そしてお姉ちゃんのサマンサを演じるのはローレライ・リンクレイター。監督の実の娘さん。
実際にはエラー君と同い年の94年生まれ。でも並んで立つと、娘さんの方がちょっと大きいから、ちゃんと姉と弟に見える。
イーサン・ホークは子供二人の実の父親だけど、バンドでビッグになる夢を追いかけてる精神的には子供の人。『スクールオブロック』の主人公と同じ。
そんな父親と離婚し、シングルマザーとなった母は「大学の教師になる！」と言って大学に通い始める。
これはリンクレイター監督の母がそうだったらしい。
そこの大学教授と再婚し、その教授には二人の連れ子がいて、一気に６人家族に！
新しい兄弟とは上手くやってたんだけど、その教授が亭主関白な感じで、「女みたいな髪型してんじゃねぇ！」と言ってバリカンで坊主に刈られたり。
「アイツ嫌だよ」とぼやくメイソンに対して「完璧な人はいない」と言う母。
だが、教授はアル中で昼間から酒を飲んで暴力を振るうようになったので「もうたまらん」とメイソンとサマンサを連れて家を飛び出す。つくづく男運のない母。
実の父のイーサン・ホークとは定期的に週末を過ごしてる。ボーリング行ったり野球観戦したりキャンプ行ったり。
キャンプの夜、焚き火の前で親子二人がマシュマロ焼きながら『スターウォーズ 』の新作について議論してる。
「新しい敵が必要だな」
「ハン・ソロがシスになるとか？」みたいに。
父は毎回黒いGTOの車で会いにきてて、「お前が16になったらこの車やるよ」と言ってくれた。
そんなこんなでメイソンは15才になった。
母は修士号を取って大学教師になり、また新しい恋人ができた。
そしてイーサン・ホークにも、新しい恋人と、その人の間に子供ができる。メイソンにとっては異母兄弟。
12年かけて撮った事で見えてくるアメリカの家族観。『フルハウス』や『シンプソンズ』、はたまた『クレイマークレイマー』等の同じ家での一組の家族の話とは違う。
大きな事件や出来事は起きないけど、離婚したり再婚して６人家族になったり、また別れて学校が変わってお父さんに新たな家庭ができたりと、目まぐるしく生活環境が変わって行ってるので観ていて飽きない。
その15才の誕生日に、父からもらうプレゼントがビートルズのCD。よく見ると各メンバーがソロで発表した曲を父が一つのCDに編集したもの。
「離れいても俺たちは家族だ」って台詞に
どこかしらに自分の家族の思い出とリンクする、琴線に触れるフックがある。
家族を描いた映画として唯一無二の作品なのでぜひご覧下さい！
