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インポート、エクスポートの口のレビュー・感想・評価

インポート、エクスポート(2007年製作の映画)
5.0
入れて、出して。
タイトルからミスリードしそうだが、至って真面目な作品である。
ウクライナの女とオーストリアの男、社会の狭間で踠き苦しみながらも前向きに生きようとする2人の人間模様が、真摯にシビアに、生々しいエロスと共に描かれる。
給与カットを食らった若く綺麗なシンママ看護師オルガは、生活のためにハードなオンラインセックスのバイトを始めるものの、プライドが捨てられずオーストリアへと出稼ぎへ。
一方、失業して無職の男ポールは自国では再就職の望みが無いため、親父と共に隣国ウクライナへとビジネスの旅へ。
寒々しい街、オンラインセックス、介護老人ホーム。
人間の性衝動や実在する貧困問題、金と権力格差、その周辺に潜む売春ビジネスまで絡めて浮き彫りにした傑作。
世の中厄介な事情が多過ぎると痛感させられ、心地良くも厭世的な感情へと誘うダウナームービーだ。
いやマジで良過ぎてビビった。
パラダイス三部作も同じ事が言えるが、柔らかく緩やかなシナリオラインに計算されたであろう芸術的な画面構成、観心地が良過ぎる。
着地点が曖昧なザイドルの製作スタイルは本当にクセになる観心地の良さがあるが、特に今作は最高過ぎた。是非とも次は酒と一緒に観たい。
また、両国の寒々しく質素なロケーションが映えること映えること。
そして今作でもザイドルのfix最高に素晴らしいセンスだ。
この作品で完全に魅力されたよザイドル監督。
続いてウィーン郊外にて神不在のエグい世界を映したと悪名高いドッグ・デイズを鑑賞する。
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