酢

悪徳の栄えの酢のレビュー・感想・評価

悪徳の栄え(1988年製作の映画)
3.5
実相寺昭雄の映画は物語の巧みさではなくて美学で魅せるタイプなので独特の難易度がある。でも今作は清水紘治様の濃ゆい主演力の甲斐もあって比較的ライトに楽しめた。没落侯爵がこんなに似合う人は他にいない。

実相寺昭雄の得意技・奇天烈アングルは控えめで、代わりに華麗な移動撮影が連発。披露されるのは退廃的なフェティッシュの世界。往年のアングラ演劇テイストに昭和初期の浪漫な香り、コテコテの悪趣味も添えて。美術の怪しさが最高。時計で埋め尽くされた沼が素晴らしい🕰あと出てくる飯が全部凄いンマソー😋黒いナマコ、鳥のトサカのスープ、クソ面倒な調理法のオリーブ料理🫒 いくら払えば食べられます?

世相から隔絶された傍観者としてただ表層的な享楽に興じるのみの空虚な世界。それが物語上の狙いだし、監督自身の人生哲学も投影されているように感じた。
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