ユカートマン

パディントンのユカートマンのレビュー・感想・評価

パディントン(2014年製作の映画)
3.9

London, Everyone is different.

暗黒の地ペルーの自然に住むマーマレードが大好きな優しい子グマは、おじさんグマとおばさんグマが若き日に出会ったロンドンから来たイギリス人探検家の話を聞いて育ち、大好きなおじさんグマが嵐で亡くなったことをきっかけに船に隠れてロンドンへ渡る。ロンドンでは通行人に挨拶をするのよ、知らない人とは天気の話をしなさい、などおばさんに言いつけられたことを守るも、現代人のロンドナーにスルーされまくり。泊まる家すらないこの子グマは絶望の淵に立たされるも、優しいおばさんに拾われ、この子グマのおばさんが出会ったロンドンのターミナル駅であるパディントン駅にちなみパディントンと名付けられ、家が見つかるまで居候させてもらえることに。しかし剥製を目論む謎の美女にその命は狙われ…


去年の夏に初めて一人でロンドン行ったときの楽しかった記憶から絶望まで鮮明に蘇りました。パディントン駅に停まってるあの紺色の電車に乗って郊外に行ったことや、劇中でも印象的に映し出されるセントポール大聖堂に足を踏み入れたこと。ロンドンの生活に奮闘しながら探検家を探すべく希望を胸にロンドンを歩き回るパディントンは"暗黒の地トーキョー"からきた自分そのものでした。駅のスタッフが黒人だったり、ニコールキッドマンの部下の男性が南アジア人だったり、人種のるつぼのロンドンのリアルを反映していて良かったです。東欧人、黒人、南アジア人、香港人をはじめとする華僑、そしてクマのパディントン。London, Everyone is different(ロンドンは変わりもんばっかだからみんな溶けこめる)という金子みすゞ的な締めは、まさに私がロンドンで感じた多文化主義を強いられた社会の楽しさについてパディントンが言い表していて最高でした。難民受け入れに消極的なイギリス(キャメロンは観たのかな?)からこういう作品が出てくるのは嬉しいです。

とはいえ、デーモンアルバーンが何らかに携わったらしいカリビアンな音楽に合わせたロンドン賛美の歌詞からはイギリス人独特の気高いプライドが感じられてこれまた最高でした。『フランスよりアメリカよりインドよりオーストラリアよりロンドンが僕にぴったり!』今年もロンドン行けますように。
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