毛玉

アメリカン・スリープオーバーの毛玉のレビュー・感想・評価

4.6
『1リットルの嫉妬の血の涙型青春群像劇 〜青春は戻ってこない〜』

本作は、高校生になろうという世代から大学生までの「大人と子供の間」に位置する少年少女を主人公にした一夜の群像劇。
全体的にセクシャルな雰囲気を漂わせながらも子役が全員きちんと子供っぽいという、本作のテーマに沿った心地の良い矛盾が画面に美しく映る!最高だ!

スーパーマーケットでの男子の視線、バスルームでの触れそうで触れない手、などなど。セクシャルないじらしさをこれでもかと見せつけるクロースアップのカットには悶絶です。特にバスルームのシーンは、年上の女性に与えてもらえたチャンスをモノに出来なかった男子に母性本能をくすぐられること必至!
全体的にカットやアングルはシンプルに見えますが、逆にそれが青くて若い青春を描く本作にマッチしています。変なアングルから撮っていても、お洒落かもしれませんが、この素晴らしく交通整理された群像劇のノイズになってしまいます。その代わり、ライティングや小道具を使った小粋な演出が効いているのが憎いです。

個人的には、群像劇の中でも大学生のお兄ちゃんのパートが特に好きでした。大人のステージに上がる直前の大学4年というタイミングで悩んでいる彼が、モスラのパロディのモスキータに登場する小美人風の双子を見てハイスクール時代の感情を回顧し、子供っぽくてバカバカしいと自覚しながらも当時想いを寄せていた双子の彼女たちに会いにいくシークエンスは最高でした。他の登場人物たちは「子供を抜け出したくて大人の真似事をする」のに対して、彼は「成熟してきているからこそ子供のようなことをして前を向く」流れになっています。これが、少し大人のほろ苦さを感じて、本作の中で素晴らしいアクセントになっていると思います。
また、とある少女が一夜を通して成長し、走って彼氏の家へ向かい、彼と別れる場面にて。未練たらしく「家に上がらない?」と誘う彼を「走りたいの」と一刀両断するシーン、最高でした。最高すぎて、僕は彼氏に中指を立てながら天を仰ぎました。

絶対、本作の中に自分の青春と被る人物・場面を見つけられる!青春っていいなぁって思って観ていたら突きつけられる「子供の日常は素晴らしい。大人の真似事をするうちに戻ってこないものになる」というセリフでぶった斬られてください!
そうでなくても、友人や恋人と「誰と誰がキスをするのか…?」「あの人は本当は誰のことを好きなの…?」と推理しながら観ても間違いなく楽しめる作品です!
あなたも一夜の青春の神話に参加しましょう!大好きです!
毛玉

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