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HUNGER ハンガーのMoscatoBiancoのレビュー・感想・評価

HUNGER ハンガー(2008年製作の映画)
1.5
映画では下の①しか明らかではありませんが、このハンガーストライキの実際の要求は以下の5項目です。

①囚人服を着ない権利
②刑務所作業を行なわない権利
③他の囚人たちと自由に交流し、教育・娯楽のための活動を組織する権利
④1週間に1度の面会、1通の手紙、1個の小包の権利
⑤抗議行動を通じて失われた減刑の完全回復

IRA暫定派(IRAという名称の組織は他にもありますが、この映画の組織は暫定派)の本来の活動目的である「統一アイルランドの建国」とは直接の関係はありません。
単なる囚人(一般の犯罪者ではなく政治犯であることに強く拘っています)の刑務所内での権利の要求に過ぎません。

例えば映画の中で、せっかくキレイに掃除してもらった監房に戻されるやいなや、囚人たちが激しく荒れ狂って元の全裸・糞尿まみれの生活を復活させる場面があります(1981年1月の実話に基づいているようです)。
これはその時、囚人服の代わりに"自分のものではない"私服が支給されたことが理由だそうです。
"自分のものではない"私服を着ることより、全裸・糞尿生活を選んだわけです。

他の②〜⑤の要求についても、10人の餓死者を犠牲にしてまで拘るほどのことでしょうか? そもそも死んだら何の権利も得られません。

どうも映画を観た限りでは、崇高な目的のために殉じた英雄のように見えてしまいます(監督は「ボビー・サンズ(主人公)の行為を良いとも悪いとも言っていない」と仰っていますが)。
U-NEXTの宣伝文も『崇高な意思を胸に秘め、獄中でハンガー・ストライキを決行した【IRA】闘士の姿』ってヒーローみたいに書いてますやん。

でも勝ち得たのは上記の囚人の権利だけで、政治犯という扱いも認められませんでしたし、もちろんIRA暫定派による「統一アイルランドの建国」も達成できませんでした。

効果を度外視した闘争自体を目的化して、本来の目的とは関係ないところで命までかける自己満テロ集団を支持する気にはなりませんでした。
刑務所の外では多くの警官や兵士や民間人を殺害してるし。
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