イチロヲ

屋根裏の散歩者のイチロヲのレビュー・感想・評価

屋根裏の散歩者(1992年製作の映画)
4.0
退屈な日常生活からの脱却を夢見る青年(三上博史)が、ふとしたことから下宿の屋根裏に潜り込む手段を発見する。江戸川乱歩の同名小説を映像化している、エロティック・サスペンス。筆者は原作を読了済み。

乱歩作品の普遍的テーマである「変身願望」を、如実に反映させている作品。嶋田久作演じる明智小五郎は、一見ではミスキャストのようだが、利発さが伝わってくる早口の演技でカバーすることに成功している。

またヒロイン枠では、実相寺監督が兼ねてから惚れ込んでいた女優、加賀恵子が起用されており、ヴァンプ的な役者スキルを発揮している。監督の個人的な趣味の世界が入っているところも醍醐味となる。

しかしながら、犯罪の真似事に嵌っていく様子が段階的に描かれている原作に対し、本作では早々と屋根裏に入り込んでしまうため、心の変遷が伝わってこない。節穴から覗いている主人公が、その場で独り言を喋ってしまうところも違和感あり。
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