カフカさん

イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密のカフカさんのレビュー・感想・評価

4.5
実在したイギリスのアラン・チューリングという数学者の業績や私生活を描いた伝記映画。彼はコンピューターや人工知能の父と呼ばれているらしい。

「あなたが普通を望んでも私は絶対にお断り。あなたが普通じゃないから世界はこんなにすばらしい」(ジョーン・クラーク)

「時として誰も想像しないような人物が想像できない偉業を成し遂げる」(アラン・チューリングの友人、チューリングやクラーク)


【あらすじ】
時代は第二次世界大戦が勃発した1939年。ドイツ軍の暗号機エニグマを解読するチームが設立され、天才数学者のアラン・チューリングが一員となる。
彼と他のメンバーは衝突を繰り返しながらも、機械の手を借りながら、エニグマ解読に取り組んでいく。
なお、エニグマの設定の数は159×10の18乗という天文学的な数字であり、解読不可能とされていた。

終戦後の1951年にチューリング宅が空き巣に入られた事件から物語は始まる。チューリングの青年期にも触れられる。


【感想】
イギリスの俳優のベネディクト・カンバーバッチさん主演の映画。

アラン・チューリングという戦時中数多くの人命を救い、連合軍の勝利に貢献した数学者を知ることができてよかった。

色んな要素がある映画。
天才の苦悩、戦争遂行計画と人命の兼ね合い、同性愛者への差別などが扱われている。
すごく考えさせられる濃い作品だった。

彼の性格の気難しさや偏屈っぽさが終始描かれている。また彼は人付き合いが苦手である。
だけど、そんな彼が好意を持ったのがジョーン・クラークという女性。クラークもチューリングに好意を抱き、彼が同性愛者であることをカミングアウトしてもなお彼を愛する。クラークはチューリングのよき理解者であった。

暗号解読に努めるチューリングであったが、解読に成功したとしても問題があった。それはドイツに解読したという事実が明らかになることであった。そのため…。

また、スパイも出てくる。戦時中ドイツに対抗するために、イギリスは体制が異なる社会主義のソ連と提携していた。しかし、チャーチル首相はソ連を完全には信用しておらず、重要な情報を提供していなかった。そこでソ連はスパイをイギリスに送り込んで…。
イギリスのスパイ組織のMI6の職員も出てくるし、結構スパイのリアルな事情が描かれているように思った。

だけど、この映画の一番大きなテーマは同性愛についてかもしれない。映画を見るまで、同性愛と同性愛への偏見や差別を扱っていることを知らなかった。
チューリングは同性愛者であった。当時のイギリスでは同性愛者は犯罪者であり、社会不適合者と見なされていた。劇中でもそのような差別の描写は多々ある。
ラストは衝撃的だったし、悲しくなった。

難解な部分やなぜ?と感じる部分はあったけど、面白かった。

そして、「イミテーション・ゲーム」という題名は、チューリングが提唱したゲームらしい。最後まで見ると深い意味があるように思った。


イミテーションゲームとは
別名:チューリングテスト
【英】imitation game
イミテーションゲームとは、コンピューターの思考能力を評価するために行なわれるゲームのことである。人工知能(AI)の開発に利用される。
コンピューターと人間に同じ質問をして、それぞれがどちらの回答であるかを隠し、第三者に提示してどちらがコンピューターの回答であるかを判定させるというものである。人間とコンピューターの区別が付かないならば、そのコンピューターは優秀である(より人間に近い)とされる。
(weblio辞書:https://www.weblio.jp/content/%E3%82%A4%E3%83%9F%E3%83%86%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%82%B2%E3%83%BC%E3%83%A0)
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