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毛皮のヴィーナスのodyssのレビュー・感想・評価

毛皮のヴィーナス(2013年製作の映画)
3.0
【逝けない二人芝居】

マゾヒズムの語源となった作家のザッハー=マゾッホ。彼の代表作である『毛皮を着たヴィーナス』をもとに、それを独自に脚本化して演劇として公開しようとする脚本家或いは脚色家(マチュー・アマルリック)と、そのオーディションに遅れてやってきた女(エマニュエル・セニエ)の二人芝居である。

すでに帰り支度をしていた脚本家は最初は彼女を追い出そうとするが、やがて試しにと演技をさせて、やがてヒロインが女王様、彼自身がその奴隷という脚本に沿った、或いは脚本を逸脱した方向に・・・・

ヒロインのエマニュエル・セニエももう48歳。まだまだ魅力的ではあるが、若いとは言えず、脚本家も最初は追い出そうとするが、徐々に彼女の魅力にはまっていき・・・という筋書きがリアルだ。

脚本家は婚約者のところに帰るはずが、なぜか女は婚約者のことを知っており、という筋書きが謎めいていて、しかし結局謎解きはなされずに終わる。観客が自分で考えろ、ということなのか。

途中、女が脚本家を性差別主義者とののしるあたりは時代の色が感じられるけど、そもそもサドマゾ概念に現代的な男女平等のようなものを入れること自体がおかしいわけで、無論平等主義を口実として使ってサドを正当化するという戦略は分かるけど、どことなく時代迎合的な感じもしないでもない。

最後で女はバッカスの巫女と化す。でも、バッカスの巫女なら脚本家を噛み殺すところまでいかないと・・・・。結局二人が肉体上で触れあうことのないままに終わるのだから、逝けないで終わるセックスみたい。サドでもマゾでもいいけれど、逝けないのはいけません(笑)。
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