福

劇場版アイカツ!の福のレビュー・感想・評価

劇場版アイカツ!(2014年製作の映画)
5.0
 アニメ76話で大空あかりが初登場しアイドルオーディションの自己紹介で「私の名前は星宮いちごです!」と憧れのアイドルの名前を間違えて口走ってしまったシーンで、私は涙が止まらなくなった。ああ、星宮いちごは報われたんだと。星宮いちごのこれまでのアイカツは実を結んだんだと。私が長らく追い続けた星宮いちごの物語は、もうすぐ終幕を迎えると悟ったからだ。 
 
表現者にとっての最大限の肯定とは何か。それは後継が生まれることだ。真のフォロワーが生まれることだ。
 
生存とは生き残ることではない。生存とは後世に続く遺伝子を残すことに他ならない。後続が生まれなかったのなら、表現者はなんら影響を残せなかったことになる。仮にアイドル活動で飯を食って生涯を終えることができたとしても、それでは真の生存を成し遂げたとは言えないのだ。星宮いちごはこの過酷なアイドル業界で生存しきった。これより嬉しいことはない!泣いた。
 
あの76話。髪型もヘアバンドも星宮いちごを模倣したアイドル志望の少女、大空あかりはアイドルオーディション会場で星宮いちご本人の前で緊張と憧れのあまり自分の名前を星宮いちごと言ってしまうあの76話…。
なんて美しい世代交代なのでしょうか?やがて旧世代となるキャラの意志を継ぐキャラを登場させることで誰もが納得する形での世代交代を達成させました。メインキャラクターの交代という重すぎるミッションをここまで美しく描ききったのはアイカツ!が初めてだろうと、きっとそんなことはないのにそう思わざるを得ない。
 
アニメOP3「SHINING LINE」から分かるように継承がテーマのアイカツ!。マスカレード→神崎美月→星宮いちご→大空あかりという系譜で彼女たちは憧れを抱きアイドルを志し、それを見た後輩が憧れを抱きアイドルを志し…という継承が行われる様がTVアニメで描かれたのち、本映画では物語の核となる星宮いちごの華々しい(物語上の)フィナーレを先輩と後輩を巻き込んで盛大に開くというストーリーになっている。
 
(大した文ではないけど一応残しておく)
本映画において特筆すべきはやはり神崎美月だろう。アイドル界のTOP of TOPであり星宮いちごをアイドルの世界へ導いた張本人である彼女は星宮いちごが主役の一大ライブ「大スター宮いちご祭り」の成功を見届けたのちアイドルを辞めると告げる。なぜ神崎美月はアイドルを辞めようと決断したのか?自分を超えるアイドルを自分の手で生み出したことで生存を確信し、心の底から満たされたからだろう。自分でアイドルとして人前に出る動機を失ったのである。
 神崎美月は以前からアイドル活動を休止して後続の育成に集中したり新生の学園のプロデュースを手掛けたりと裏方に回ることが多かった。おそらく神崎美月は自らがアイドルとして表舞台に立ちアイドル活動をすることにそこまで魅力を感じなくなりつつあったのではないだろうか。単に利己的な理由だけでなく常に自身のアイドル活動が業界にとってどれだけ付加価値を与えられるだろうかという広い視野を持ち活動し続けてきたこの神崎美月においてこの決断は非常に納得がいく。
 しかし神崎美月は自らが生み出したアイドルが更に生み出したアイドルである大空あかりに導かれ再びステージに立ち、アイドルを続ける動機を獲得する…。神崎美月は間接的に神崎美月自らの手によって導かれ支えられる。泣いた。
 
 神崎美月の登場から大空あかりの出現までの時間はおそらく10年に満たないと思うが、アイカツ!の世代交代の描写からは途方もない悠久のスケールを感じさせられる。ラスト、いちごとあかりを見つめる美月のまなざし。彼女は何を想っていたのだろう?私に分かるはずもない。なぜなら老人が孫と子を見つめるまなざしのそれだから。
  
・・・・・・相変わらずあおいたんが可愛すぎる!!!青髪の子ってなんでこんなに可愛いんでしょうか?フィギュアも買ってしまいましたし、フィギュアで着てる衣装のアイカツカードもいつの間にか揃えていました。私スターライト学園の制服デザインが物凄く好きなので3Dモデルがおそらく初登場?で制服+普段の素の髪飾りで素のあおいさんのダンスが見られて著しく穏やかじゃない!!と思いました。本当にありがとうございました。
 
福