福

愛しのタチアナの福のレビュー・感想・評価

愛しのタチアナ(1994年製作の映画)
5.0
最近仕事の漫画を作る傍らエンタメとして成立する物語の勉強をしていて、結構難しくて大変だ、、と思っていたところにこんな物語もクソもないのにめちゃくちゃ優れた映画を観てしまって益々わけが分からなくなってしまった。
  
登場人物はほとんど何も語らないのに映画自体が語りかけてくる。オフビートでこういうことができるのは本当に凄い。ここまで抑制の効いた作品に痺れる。
 
酒飲んでイキるけどいくら夢見ても結局無理だよって感じが90年代末期っぽい。侯孝賢の憂鬱な楽園でも同じことを思った。ただ、憂鬱な楽園と違って主人公の片割れが最後いい感じの方向に進むからより孤独を感じる。でもそんな悲観するようなことでもないと思うんだけどな。まだ海賊王とか目指す漫画が出てこれるような、逃げちゃダメだって言える余裕のある、豊かな時代の作品なのかもしれない。
福