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跪く女のmのレビュー・感想・評価

跪く女(2013年製作の映画)
4.4
パッケージや邦題のイメージから敬遠する方が多そうだが、これは精神的DVをリアルに描いた作品で、ポルノ的な物とは全く違う。
少しでも映画ファンが食いつきやすい事を書くと、レベッカ・ファーガソンが重要な役で登場します。詳しくはまた後程。

独占欲・支配欲が強くてケチでマザコンで世界が狭く、相手の女性から尊厳を奪い、キレてもすぐに弱々しく謝る(これが典型的なクズ男の症例でタチが悪い)『器の小さい』男の吐き気がする程絶妙にリアルな人物造形が出色。
この男を演じる俳優の長身と禿頭も、対照的な主人公の女優の小柄さと童顔もまた効いている。最初は反発していたが徐々に服従して壊れていく主人公の痛々しい変化も良い。

レベッカ・ファーガソンが演じるのは主人公を助けようとする心強い親友。まさにタフなハンサムウーマンという感じで実に格好良い。主人公と一緒にいる時の気風の良さと、クズ男と向き合う時の冷静な敵意の向け方の対比がクール。

しかしそんなレベッカ姐さんでもなかなか彼女を救う事ができない。
「こんな男とはすぐ別れなさい」という結論はレベッカ姐さん同様誰もがすぐに辿り着くが、そこから中々抜け出す事のできない精神的DVの生暖かい地獄を観客は歯痒さと嫌悪感と共に観察する事になる。人という生き物はままならないものです。

幕切れは鮮やか。彼女にはどうかそのまま走ってレベッカ姐さんと呑みに行ってほしい。
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