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明治侠客伝 三代目襲名のあのレビュー・感想・評価

明治侠客伝 三代目襲名(1965年製作の映画)
4.2
小津安二郎もびっくりな超ローアングル任侠映画でした。こんなに麗しいヤクザ映画があるんですね。

全体的に情を出しすぎているところ(特にクッサイ歌詞の演歌を挟むところ)が若干陳腐で残念でしたが、映像にヤクザ映画らしからぬ色気が漂っていたので、最後まで釘付けでした。直接的な表現は避けて、接吻からタバコの煙に飛ばすところの上品さや、河原での浅次郎と初栄の邂逅の鮮やかさが五臓六腑に染み渡りました。

そもそも、神輿を取り巻く群衆へ気味の悪い顔が入ってきて、群衆の流れに逆らう足が見えたかと思ったら、背中越しに刃物が光り、二代目の顔が歪む。もうこのオープニングから思わずニッコリでございます。凄まじくスタイリッシュでした。しかし、その後の襲撃シーンがあまりそれを超えていかなかった印象です。

鶴田浩二主演の映画を観たことがなかったので、果たしてどんな方かと思ったら、意外と男らしさよりも、情け深さを感じまして、三島由紀夫さんはこういうのがお好きなのかと思いました。
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