らいち

メイズ・ランナーのらいちのレビュー・感想・評価

メイズ・ランナー(2013年製作の映画)
3.5
若さがほとばしっている。あまり期待していなかったが全然面白いじゃない。思わず前のめりで観てしまった。

記憶を消されワケもわからず、巨大な迷路に囲まれた世界に放り出された青年たちのサバイバル&脱出劇を描く。

「ハンガーゲーム」や「ダイバージェント」と同様に、10代が活躍するディストピアの世界を描いた映画だ。しかしそれらと明らかに違うのは、主人公にはじまり、画面の多くが男子で埋め尽くされている点だ。そこに不思議とむさ苦しさはない。どんなに泥だらけになっても、汗だらけになっても、一定の清潔感が保たれる。男子コミュニティーで想起される生活臭も感じさせない。リアリティよりもファンタジーを優先した点が大きい。「イケメン揃い」まではいかず、程良く顔立ちの整った若き俳優たちのキャスティングも効果的だ。

また、女子のいない映画は、恋愛要素などの展開に幅を持たすことができない。多感な10代が主人公であればなおさらだ。しかし、本作はそれをハンデとしない。主人公たちの目的は「脱出」の一点にあり、その実現には「脚力」が必須というのが面白い。男子に身体能力で劣る女子を、同レベルで混合させては、アクションの多くに説得力をもたせることはできなかっただろう。原作通りの結果論であるにせよ、男子だけで(1人だけ女子が加わるが)構成した物語は正解だった。

とにかく走る。全速力で突っ走る。タイトル通りの「ランナー」なアクションが本作の魅力だ。
それは、走らないと潰される・襲われる、という「追われる」状況だけでなく、自らが仕掛ける「攻める」状況でも発動される。若さ故の無尽蔵の体力と、脚力によってもたらされるのスピード感は、アクションスリラーと非常に相性がよい。ギリギリのところでセーフになる気持ちよさ♪自分もなぜか全速力で走りたくなってきた。

主人公のトーマス演じるのは、本作で初めて観たディラン・オブライエン。直面する危機に対して、ルールを突き破り変化をもたらす救世主を熱演する。顔立ちがローガン・ラーマンと被っているのが惜しいが、驚くほど演技力が仕上がっており、映画の座長を張るのに十分な存在感だ。彼の迫真の演技により、映画の緊張感が持続すると言ってもよい。走り姿もサマになる。その他のメンバーも、一部テレビドラマで活躍する俳優が散見されるが、皆ほぼ無名に近い。とりあえず、主演のオブライエンが立ちまくっているので、この中から次世代のスターを見つけだすのは難しいかも。主人公の1つ上の先輩にあたるチャックがデブっこで可愛く、アニメ映画「パラノーマン」に出てきた男の子にソックリだ。

「いったい何のために?」という疑問に対して「すべてのことに理由がある」とする本作。全3部作で明かされるであろう、謎解きが本作の引力になっているようだが、果たして納得のいく答えを観客側に提示できるのか、甚だ疑問である。今のところ、興味を引かせるためだけの餌をばらまいているようにしか見えないのだが、シンプルにアクションスリラーとして楽しめるシリーズになりそうだ。次回作が楽しみ。

【65点】
らいち

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