ニコラス・レイの未公開ミュージカル。ジェーン・ラッセルが顔を茶色にして演じてる。当時は、みんな白人が化粧してロマになったりしたのであったのね。たわないのない偽装結婚による恋愛物。ロマの人を茶化している感じが今時ではないのかもしれない。

• #熱い血

ｱﾒﾘｶのジプシーコミュニティ内での、兄弟げんか話だった。ジプシーたちのカラフルな衣装にテクニカラーなので美しい。レイのオレンジ色好きがここでも。

鞭バトルが見もの。

　筋書きは非常にいい加減な映画で、なぜジェーン・ラッセルは突如結婚する気になったのか、なぜコーネル・ワイルドはラッセルのことが気になり戻って来たのか、といった主人公２人の気持ちの移り変わりが殆ど描かれない。でもそれでいいんです。ハリウッドスターのようにセクシーな２人なのだから、くっつかない訳が無い、ということが前提なんです。という訳で現在の映画から見れば何とも幸福な映画なのだ。しかしプロット展開に拘泥せず画面に目をやれば、本作はちょっと類例が思い浮かばないぐらい突出した色遣いの映画だ。すべてのシーンで赤、オレンジ、ピンク系の衣装を着た人物ばかりが登場し、スクリーンを染め上げる。『パジャマゲーム』（1958）のハリー・ストラドリングの画面を想起させるが、それ以上だ。この一種気狂いじみたパラノイアックな色遣いによって、米国社会におけるロマ（古い言葉だとジプシー）の世界を本当らしさを超えた映画的現実、映画的異世界として見事に提示してみせている。エンディング、そのラストカットの幸福感も映画の真実だ。