彼氏から暴力を受けている親友を救うため地方からやってきた女の子ぼんと幼なじみの男の子リンちゃんが、ネットゲームで知り合った友人べびちゃんと共に親友の家へ突撃するという話。
監督は「ももいろそらを」の小林啓一。
長い長い文書で描かれるあらすじと共に現れる「MARVEL」ならぬ「BONLIN」というタイトル。
そして、BL本のカットや初音ミクの曲等ごった煮なアイテムが登場し、とらのあなで同人誌を選ぶぼんとリンちゃんの痛いイタイ会話から始まる。
「淫獣と書いて友よ」や「トキメキ指数が、こう、バシュッと・・・」とはたから聞いていると耳を塞ぎたくなる程のやりとりを恥ずかしげもなく繰り広げる光景は「アニメショップあるある」風。
僕はホンモノというよりかはにわか寄りのぬるオタという感じなので同人誌には明るくはないが、いわゆる腐女子・腐男子同士の会話というのはこんなものなのかなぁと思わせる、独特の自分ワールドを展開しているような空気を感じさせてくれた。
すーぱーそに子のコスプレをはじめとする今風な衣装に身を包んだ店員達を横目に、矢野兵藤の太っちょの方みたいな風貌のべびちゃんとリン、ぼんがこれまた人目を憚らずア○ルや肉○の話をしている場面や、フロアを徘徊する三人を後ずさる様なカメラワークで捉えた長尺のシーンなど、前作同様とにかく長回しや長台詞が印象的だった。
「肉便器救出作戦」と名付けた友人奪還ミッションは、ゲームで言う所の中ボス・ラスボスで区切られた二章仕立ての物語になっており、当初の目的であった友人の彼氏を倒したと思ったらその裏にはさらなる闇が待ち受けていたという展開に。
そして、ドラクエで言う所の「ラーの鏡」によってぼんの真実の姿が浮き彫りになり、オタクな知識だけでは敵わない現実の暗部との戦いへと発展する。
ぼんの前に立ちはだかる女としての「現実」である友人みゆとの弁論合戦はこの映画の見所で、およそ10分以上もの間お互いがお互いを捲くし立てる壮絶な場面で、女達の戦いをただただ外野から見つめ続ける男達がなんとも情けなく映っているところがシュールでもある。
素人童貞のべびちゃんが絶妙なタイミングで笑いを放り込んでくるので、いちいち面白い。
ゲームとは違ってボスを倒したからさぁおしまいというわけでも無くて、それでも現実は続く。
現実にも穴はあるんだよなぁ・・・と考えるものの、それが結局入り口か出口かは分からず踏み出すのが怖いというのは、二人がプレイするゲーム「ICO」とも通ずる所であり、踏み出す勇気が必要だけども結局は手を繋いで助け合いながらゴールを目指すしか無い。
そんな事を思う映画だった。
べびちゃんのデフォルメされたオタク部屋はアナログな印象が漂うし、何処かに居そうで本当は居ないだろうというキャラクターからは圧倒的なリアリティは感じないものの、オタク気質のある人から見ればハートがクソ痛くなる事もあるだろうと思う。
個人的には「死ぬのが怖くなって来た・・・やばいやばいやばい」というJKの台詞にゾクっと来るものがあって、それを思い出すとこっちまで不安に押し潰されそうになってくるから怖い怖い怖い、なのであった。
ボーカロイドとかは全く興味無かったが、初音ミクの主題歌「迷子のリボン」が鑑賞後もヘビロテするくらい良い曲だった。
@シネ・リーブル梅田