Jeffrey

ジュビリー/聖なる年のJeffreyのレビュー・感想・評価

ジュビリー/聖なる年(1978年製作の映画)
2.8
「ジュビリー/聖なる年」

冒頭、16世紀イギリス。エリザベス1世、魔術師によって呼び出された天使エアリエル。未来のロンドン、パンクな奴ら達、殺人、略奪横行。暴力、支配、荒廃した無法の街。今、幻想ギャングディストピアが写し出される…本作は映像美の巨匠デレク・ジャーマンが、1978年にイギリスで監督した近未来のロンドンをディストピアとして描いた幻想的ギャング・ムービーであり、このたびBDボックスを購入して初鑑賞したが何とも言えない作品である。英国が生んだジャーマン監督による、幻想ギャング・ムービーで、アダム・アント、トーヤ・ウィルコックス、ウェイン・カウンティといったミュージシャン、それから「ロッキー・ホラーショー」のリチャード・オブライエン、そして世界的舞踊家のリンゼイ・ケンプが出演していて、音楽にはブライアン・イーノほか、ポストパンクのアーティストが参加し、80年代の空気が詰まった1本になっている。監督80年代以降、ザ・スミス、ペット・ショップ・ボーイズなどロックミュージシャンのビデオを制作してまたコイルやサイモン、フィッシャー・ターナーの才能を発掘してイギリスのロック界に大きな影響与えている人でもある。



さて、物語は、16世紀イギリスのエリザベス1世は、魔術師によって呼び出された天使エアリエルに導かれ、未来のロンドンにやってくる。そこは略奪が横行し、暴力が支配する荒廃した無法の街だった…と簡単に説明するとこんな感じで、時代を感じさせるパンクガールたちが強烈なビジュアルとして写し出されていた。いゃ〜、やっぱりジャーマン作品苦手だわ。ドイツ映画を見ているかのように暗すぎる。ユニオンジャックのコスチュームや、グリーナウェイのような英国式庭園が映るからそこら辺は英国っぽく感じるんだけど、それとパンクだよね。しかし物語は非常に暗くて陰湿…。一応近未来を舞台にしているみたいだけど、ごろつきの住処のようなところが舞台になっている。出てくるのはごろつきかズベ公のどちらか(笑)。本作は英国が生んだジャーマン作品の3作目にあたり、前作「セバスチャン」(76)ではローマ時代の殉教した聖人を撮ったが、本作は16世紀、エリザベス女王が近未来のイギリスにタイムスリップすると言うSF幻想で、ディストピアとなったロンドンを舞台に暴力的世界を生きる若者たちを描いた異色のギャング・ムービーとされているのだが、タイトルの"ジュビリー"とは25年または50年に1度行われる祝年のことで、ユダヤ教に基づいたものだそうだ。

そして確かにそう言われてみればと言うレベルだけど、私個人はそこまで強く意識はできなかったが、本作はジャーマンによる「時計仕掛けのオレンジ」(71)とも見られているようだが、スタンリー・キューブリックの計算された美術デザインとは全く異なり、猥雑でアンダーグラウンドのパンクカルチャーに重きを寄せて、彩られている。そもそもジャーマンは大学で美術を学んだ後、ケン・ラッセル監督の美術スタッフとなり、その後8ミリ映画で監督デビューをして、一方でミュージック・クリップを手掛け、作家、園芸家としても活躍していた。本作のほか、主な作品に実験的な作品も多くとっている。その内容は様々で殉職者だったり画家だったりシェイクスピア劇だったり哲学者だったり歴史上の人物を題材にした作品が目白押しだ。そしてビジュアルオペラだったり、告白的エッセイなど多彩な作品を残しているが、私はどれも苦手であった。彼はゲイであることを公表して94年エイズによりなくなっているようだ。
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