怡然じらく

リヴァイアサンの怡然じらくのレビュー・感想・評価

リヴァイアサン(2012年製作の映画)
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海と生物、そこで働く人間の「ありのまま」を視聴者に体感させる作品。
本当にありのままを平凡に俯瞰で撮れば、私の目や耳は情報をより分けて、きっと見たいものしか見ず、聞きたいものしか聞かない。
だが本作では、カメラの切り取る範囲はとことん狭く、私に選択の隙を与えないほど(もしくは選ぶのに飽きてしまうほど)カメラが映す対象を限定して捉える。映す対象の中に強弱がない。普段なら無意識のうちに処理され、見えないものとして扱われる映像が、すべて認知下に入るような感覚に陥る。
映像は流れ続け、目を背けない限り自然の姿を半強制的に味わわされる。

「ありのまま」をみせる、たったそれだけのことのように思えるが、意外にも非常に細部まで人が手を加え、気を配っているように感じる映像だった。普段どれだけ自分が選り好みした世界だけを見ているか自覚して驚く。

リヴァイアサンが何を指しているのかはっきりと理解は出来なかったが、本作の中盤、「水」があらゆるものと、文字通り姿かたちを自在に変え関わっていた。

水に操られる、命を失った魚
水を切り裂いて飛ぶ、生命力に溢れるカモメ
水を揺らし進む、巨大な漁船
水を使って体を流す、人間

様々な生命の横につねに在りながら、その姿を我々に明かさず、天使にも悪魔にもなり得る「水」に畏怖の念を抱いた。
怡然じらく

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