商業映画とは一線を画したストローブ=ユイレらしい緩慢なリズムが全編に貫かれるうえにストーリーも大したものではないのでやはり眠気に襲われるけれど、それでもシチリアに来たことが無い自分でも懐かしさを覚える風景の数々や変だけどどこかほっこりとする土地の人と故郷に戻ってきた主人公のやり取りによりまるで自分が故郷に戻ってきたあの時間が劇中に感じられて見終わったあとなぜか心が温かくなる余韻がもたらされた。
独特の構図による冴えたショットの数々も印象的で、他のユーザーも言っているとおりあのニシンの焼いている映像が特に心に残る。
冒頭での蜜柑売りやラストの研師(変な言動と動きが凄いインパクトを与える)は観賞後も記憶にあるけど、肝心の母親との再会があまり心に残らないのはストローブ=ユイレのリズムと母子のドラマがあまり噛み合っていなかったということなのだろうか。
