とむ

悼む人のとむのネタバレレビュー・内容・結末

悼む人(2015年製作の映画)
1.5

このレビューはネタバレを含みます

堤幸彦監督は、今までにない自分にチャレンジしたかったんだろうと思う。
コメディや小気味の良いテンポの作品を撮り続け、気がつけば還暦を迎えていた彼は、自分が向き合うことになったものに対して真摯な姿勢で挑戦しようとした。
その時にこの「悼む人」を映像化しようと意気込んだのだろう。


自分は山形での先行上映で今作を見た。正直、面白いとは言い難い。
そもそも堤幸彦の作風が苦手だったということもあったのだが、
その全てを封印したという今作も自分は好きにはなれなかった。何故か。
上映会に来ていた一人の女性の質問がその答えだった。


「堤監督のファンです。父親の葬式で中原中也の詩をみんなで朗読するシーンで笑ってしまいました。とても面白かったです。」


そう、彼は自分の作風を封印し切れていなかったのだ。
コメディなのか、それ以外なのか、数十年映画を撮ることで彼の中に構築されてしまったある種の型が、彼から抜くことはできなかったのだ。


唐突な性行為
唐突なコメディ的な演出
唐突な演劇的台詞
唐突な場面転換


どこを見ても、こちらを置いてけぼりにしてしまう作品である


非常に残念ではあるが、
この作品は失敗作だ。
堤幸彦作品としても、新境地のヒューマンドラマとしても。

苦しい思いをしているかもしれないが、
堤幸彦には、懲りることなくヒューマンドラマに挑んで欲しい。
新たな境地を見せつけて、唸らせて欲しい。
とむ

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