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グリーン・インフェルノのJIZEのレビュー・感想・評価

グリーン・インフェルノ(2013年製作の映画)
3.9
森林伐採の横暴を妨げ世に訴え掛ける目的で未開なアマゾンの奥地に訪れた環境保護を唱える学生たちが帰国中に飛行機の墜落事故に遭い食人族に捕らわれる様子を描く食人カニバリズム映画‼導入部40分をバネに残り60分の風刺が飛び掛かるテーマ(主題)を全肯定‼バイヤー!バイヤー!ロス監督の作品は上半期第二位にも挙げた『ノック・ノック(2016年)』に続く二作目の鑑賞。シナリオは端的に意識高い系の学生がジャングルの奥地に住まう先住民に無惨に食い殺される映画なんですが(人間or食人族で)どちらが真の野蛮人なのか,という事(問題提起)だと思いました。食人族よりもそれを脅かす文明人の方が醜いのでは,という痛烈な風刺。単にスプラッタ悪趣味ホラー映画で内容を締め括らず文明に抹殺されようとする先住民(ヤハ族)に学生等が手を差し伸べた結果,逆に襲われる,という皮肉(不条理)が込められている。原題の『The Green Inferno』も直訳で"緑の地獄"ですが主にイーライ・ロス監督が『食人族(1981年)』にオマージュを捧げ蘇らせた由来だと感じます。非難を浴びる異端な脚本は物凄く評価したい。

→作品概要。
監督は『ノック・ノック(2016年)』のイーライ・ロス。主演にはロス監督の妻でもある女優ロレンツァ・イッツォ。監督としては『ホステル2(2007年)』以来6年ぶりにメガホンを取った待望の作品。

→お食事シーンの阿鼻叫喚。
作品を扱う以上このお食事シーンに触れず立ち去るわけにはいかない。私自身,グロ忍耐はない方だが(ある意味で)文章自体がR18指定なので苦手な方はツラツラ読み流して下さい。結果から言えば,ヤハ族の集落に到着以降で長身の1人目の殺され方が映像デフォルメ効きすぎでウワッとなりました。その直前に弓(ボウガン的な武器)?で逃亡中に首を貫かれる女性の殺され方も中々想像を煽られウワッときましたが…。話を戻し。1人目は主に目玉を抉られ舌,頭部,手足を切断した後にその部位を丸焼き。パクパク満面の笑みを浮かべ…,という特に1人目は効果音の出し方や断片的な映像の魅せ方など非常に酷かった。また女性側の方が案外,惨殺描写が抑え気味(中でも女性三人の内1人は結果的に生死の行方が不明なため)で映され男側の方が蟻責めや集団リンチを食らい生きたまま襲い食われるなど本当に醜い。そういう側面ではエログロを期待した層はエロの部分で肩透かしを食らった感じは否めないだろうと感じた。特に中盤で女性3人が連れ出され処女どうかの検査を尖った器具を用い強制させられる部分はヤハ族の文明的な習慣が垣間見え間接的に一番目を覆いたくなる箇所でした。中でも最低最悪の白人が最後の最後まで喰われずノタノタ生存してる事自体も残酷性を沸き立たせる。ヤハ族が無邪気に残酷な事を繰り返しやり続けてる事は裏を返すと我々文明人側とも生活上でアンチテーゼを為していて一方的に彼等に対し非難を浴びせる事は出来ないんじゃないかと。

→一過性の志で抗議運動に手を染めてしまう若者。
この作品はやはり導入部40分(社会情勢)の描き込みが功を為した作品だと感じました。順を返せば序盤,ロレンツァ・イッツォ扮する主人公ジャスティンは大学内で環境保護を訴え掛ける活動(主にハンスト)をするグループ集団に軽い好奇心でホイホイ活動に参加してしまいペルーの現地に出向いては鎖で自分を締め付けそれ以上,文明破壊の拍車を打破すべく仲間たちでスマホのライブ配信やSNSを駆使して社会全般にその問題を訴え掛けるんですが,つまりそういう"口舌だけの刃"を武器にお手軽な正義感を安易に振りかざしたり指先だけの行動で相手側の醜態を晒したりするなど軽はずみに相手の信念を弾劾し正義を逆手に取る悪意のカタマリ(Social Judtice Warriors問題)にあるように感じました。映画の本編でも団体で現地に乗り込みメディア全般の気を安易に引いたりカメラを回し続ける事で半強制的に習慣を変えさせるなど生半可な実効性(慈善活動)を武器に表面的な善行で軽々しく身を乗り出してしまったり立場を利用して安易に利益をたくらむなど内側に潜む若者たちの真な野蛮さ(or具体性の無さ)に警句を打ってるように感じました。

→総評(社会風刺が詰まるカニバリズムの傑作)。
最終的に人食いカニバリズム映画として新規の初心者にも(導入部の問題提起や風刺の側面を取れば)お勧めできる作品なのかと感じました。また続編が予定されたる『Beyond The Green Inferno(原題)』にもアイツの報復をかけ残虐なプロットを願いたいところです笑。非常にフラストレーションが蓄積しました。なにしろ多くの命を失わせた事に気を留めず無傷で最低最悪なアイツを(映画は)生かしてるんでね。またジャスティンの父親が国連職員の設定も政治的な背景が伺え面白かった。作品の比率でも主に前半部におけるマリファナ乱用や銃の乱射など学生側の野蛮さと後半部における残虐なお食事シーンなど食人族側の野蛮さで作品的にはWinWinな構造なのかとも結果感じましたね。学生たちが捕らわれた檻から脱出を試みる最中でアクシデント要素も盛り込まれてるのでサスペンス的な道筋でも昇華された作品に感じた。という事で,最後の最後でスカッとしない不満(後味)はありましたが比較的見易い食人族映画に仕上がってると思うので厳しい方はグロ描写を飛ばしてでも社会的な問題提起の箇所に注目しながら真の野蛮人はどちらなのか。いろいろ考えながら楽しむ面では食人族映画を是非お勧めします‼!
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