B姐さん

フューリーのB姐さんのネタバレレビュー・内容・結末

フューリー(2014年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

「負けた戦争」(ベトナム戦争)や「間違った戦争」(イラク戦争)は問題点(倫理的なことや戦争後遺症など)を省みる機会があり、必然的に色々な作品を生む。

だが「勝った戦争」となるとあまり内省的な作品は見られなかったりする。特に第二次大戦ものなどはそうだ。だからリベラルな考えを持つブラッド・ピットがこういう作品を製作した意味は大きい。そしてアメリカ海軍に17歳で入隊し潜水艦乗りで、軍人として戦った経歴を持つ異色の監督、デヴィッド・エアーは(多分)リアリストなのだろう。演出もドライで感傷的なところはほぼ皆無。良いも悪いも「戦争は戦争」。軍人が駒となり、犠牲者が多く出て、ウンザリするものだ、と。

軍隊の中の特殊な規律の中、戦車の中にいる5人はまるで家族のようだ。
その中の父親役(B・ピット)は子供(ローガン・ラーマン)に人殺しを経験させて一人前の男にさせていく。そこにはいいことも悪いこともない。戦争とはそういうものだ、ということしかない。当然のことながら人殺しの経験をしようが、子供は子供だ。
ラスト、敵であるドイツ兵の少年に戦車の下に隠れている所を見つかったが見逃してもらう。それは同じ子供という理由からだろう。

彼の顔には、先程まで敵を小火器で倒したカタルシスはとっくに消えていて、救ってもらった命を噛みしめることしかできない。だからそこには、仲間から「ヒーロー」と呼ばれて戸惑う子供の顔しかない。そして初めて戦争の現実を、ウンザリしたやるせない気持ちを抱きしめるのだ。

@TOHOシネマ渋谷(12/1/2014)

※ドイツ少年兵たちを描いた『橋』と立て続けに見ると感慨深い。やるせない気持ちが倍増します。

付記:シャーマンVSティーガー(本物!)の戦いは白眉。
ちなみに私的戦車バトル映画のNo.1は『戦闘機対戦車』
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