みちみつる

フューリーのみちみつるのネタバレレビュー・内容・結末

フューリー(2014年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

戦争の残酷さを徹底的にリアルに描いた戦争映画。
人が殺されるシーンなど、とてもリアルでグロくて匂いが漂ってきそうなほど生々しい。しかし戦争とはこういうことなのだ、と思い知らされる。

しかし残酷な中に、登場人物たちの関係性も丁寧に描かれている。特に注目したいのは新兵のノーマンだ。
戦死した副操縦士の代わりとしてやってきた、臆病で頼りないが心優しく穏やかな青年であるノーマン。他の戦争慣れしてしまった軍人とは違い、敵兵を殺すことを嫌がり「敵兵を殺せ」という主人公ドンの命令に必死に抵抗するため、最も我々視聴者が感情移入しやすい人物でもあると思う。そんなノーマンだが、上司であるドンに異常なまでに厳しく指導され、かと思えば優しく慰められ、そんなやり取りをを通して次第に心を開いていく。そして仲間同士の関係性だけでなくドイツ人女性との淡い恋愛模様も描かれるのだが、この女性がドイツ軍の空襲により亡くなったことでノーマンに心境の変化が表れる。最初は殺すことを躊躇っていたノーマンが最後には“マシン”と呼ばれるほど、ナチス親衛隊を銃殺しまくる殺人マシンと化してしまう…「敵を殺さなければ、自分も大切な人も殺される」…そんな非日常的な状況が心優しい青年をここまで変化させてしまうのだから戦争は恐ろしい。
また、他の搭乗員も最初こそノーマンを小馬鹿にしていたものの、いち兵士として任務をこなすノーマンをだんだんと認め始める。粗暴なふるまいをするクーンアスが自分の行いの非を認め、ノーマンに謝るシーンが非常に印象的(なんてわかりやすい死亡フラグッ…!と感じたせいもあるが笑)。クーンアスも本来は根の優しい青年で、戦争が人格まで変えてしまったのだろうか?と想像してしまう…

戦闘シーンは目を背けたくなるようなシーンが多かったが、しかし当時の戦場での戦車の役割や活用方法などがわかりやすく撮影されていたため勉強になった。また貴重な実際の戦車を使ったというドイツ戦車ティーガーとの一戦では、当時のドイツ戦車がいかに性能が良く、恐れられた存在だったかが明確にわかった。怪物だ…とつぶやきたくもなるわ…不謹慎かもしれないが、ティーガーカッコいいなと思ってしまった。戦争は嫌いだし、人が殺されるのも嫌だが、兵器のフォルムなどは好きなので…
最後の作戦はあまりにも無謀で絶望感しかないのだが、任務のため勇敢に敵に立ち向かう搭乗員たちの姿には心を打たれた。

最後の戦闘のあと、ノーマンが戦車から脱出し潜んでいたとき、ノーマンを見つけながらもそのまま誰にも報告せずに見過ごしたナチス親衛隊の若い兵士が印象的。彼も戦争に巻き込まれはしたものの、不必要に人を殺すことは避けたい、そんな良心の残った青年だったのだろう。
ラストのノーマンの表情も胸が苦しくなる…「英雄だ」と言われたって、それを素直に喜べるような結末ではないのだから。

実は半分は戦車、半分はブラピ目当てだったのだがそんな軽い気持ちで観ていい映画では無かったような気がする…でもやっぱり戦車もブラピも最強にカッコ良い…戦争の悲惨さをストレートに訴えてくる良い戦争映画だった。