ゾンビおじさん

S.W.A.T. vs デビルのゾンビおじさんのレビュー・感想・評価

S.W.A.T. vs デビル(2014年製作の映画)
5.0
B級ホラー映画を見ながら映画の編集者がツッコミを入れるメタB級映画コメディ。例えばCABINがホラー通であればあるほど楽しめるメタホラーであるように、本作はB級クソ映画という肥溜めにどっぷり浸かってしまい悪臭を放つが故、一般映画ファンからしてみれば鼻つまみ者な貴方に捧げる最高のリスペクト。この映画は数奇な制作背景を辿っており(詳しくは後述する)、サタンの産声とともケツの穴から流産したクソ映画をそのまま下水に流さずに、なんとか最後の一滴まで清らかな汚水を絞り出して再利用したリサイクル精神に対し、一人の映画ファンとして賞賛を示したくなる出来です。

B級映画に視聴者自らツッコミを入れながら楽しむ行為はドブに捨てた90分を笑いに昇華するためのヤケクソの自己欺瞞であり、能動的に思考を巡らすので非常に消耗するものです。しかしこの映画ならきめ細かく且つ鋭くクソを抉るツッコミが既に内包されており、受動的にB級映画を楽しめるためB級初心者はもちろん、ゾンビ映画の見過ぎで脳が腐ってしまったB級映画ファンにも安心してお薦めできます。

さて、当のあらすじについてですが、アメリカの映画制作会社がホラーの脚本をブルガリアの制作チームに送付し撮影を委託したところ、現地人の監督と演出家が一切の指示に従わず恐ろしく低クオリティなSWAT vs 悪魔崇拝者の映画を作ってしまいます。アメリカのスタジオに送付されたその映画を編集しながらその酷い出来についてツッコミを入れまくるという内容です。しかしこの制作顛末、IMDBなどの情報を見る限りフィクションではないようで、

本 作 制 作 過 程 の そ の も の の 事 実 の よ う だ 。

つまり作り話ではなく本当に、ブルガリア人監督とブルガリア人俳優が勝手に作っちゃった極めて低クオリティな映画。そんなクソ映画をしょうがないからアメリカ人制作会社が徹底的に貶して、糞袋もといサンドバッグを殴っては飛び散る排泄物の飛沫を笑いものにしている映画ということの様なのです。いやはや道理で、この過程を知れば作品全体に漂うポッドキャスト感というかyoutubeの海外ゲーム実況のような違和感がすんなり納得できるものです。lol。

脚本家が本作の出来についてAfterDark(制作会社)になんど問い合わせても回答をはぐらかされ、終いにはバーに連れ込み酒を飲ませてやっとこさ口を割らせたという事実には同情を禁じ得えません。



世の中いろんな映画があるものです。糞映画は糞映画らしくそのまま便器に蓋をされ見捨てられ、下水処理場の片隅で腐っては朽ち果てていくものが数多あります。ただ本作は同じように腐り落ちる運命を辿らず製作者たちが熱心に手間ひまをかけ、腐敗ではなく発酵を遂げたがゆえに、ブルガリアヨーグルトのように付加価値を授けられ蘇ったのです。映画製作者の愛が昂じた爽やかな甘酸っぱさ、教訓という名の善玉菌が脳と大腸に届くのを感じると、明日は快便がどっさり出そうな気すらします。