mimicot

マルケータ・ラザロヴァーのmimicotのレビュー・感想・評価

マルケータ・ラザロヴァー(1967年製作の映画)
4.9
待ち焦がれていたフランチシェク・ヴラーチル監督作品の上映。劇場で観ることが出来るなんて夢のようでした。

物語は、13世紀ボヘミア王国。宗教と部族間の争いに巻き込まれ、敵対する男を愛してしまった少女マルケータの運命を描きます。
チェコ映画最高傑作と言われてますが、こんなに美しい時代劇は初めて観ました。

特に好きだったのは、シスターたちが丘の上の修道院へ向かうシーン。マルケータが白い鳩を抱えて現れたとき、大好きな映画「白い鳩」の少女の再現みたいで、その美しさに泣きそうになった。

映画作りで何より風景を重視する監督の映像は、一枚一枚美しい白黒写真を繋ぎ合わせたかのように詩的な情景。
そこへ関係ないようなショットが挟み込まれることで不思議な世界観も生まれます。

360度を捉える雪景色の映像
降る雪の向こうにいるマルケータ
静止する不気味な狼の群れ
どうやって狼たちを手懐けたのだろう。
妹が愛し合うシーンもスピリチュアルな演出が神秘的でした。

金の絹糸みたいな長い長い髪
すこし上目遣いのマルケータが天使のように可愛らしい。
むごたらしい争いの中、彼女は尊くて愛おしい存在でした。

当時のものを完璧に再現した衣装や美術と、取り憑かれたような俳優たちの演技が、本物のボヘミア王国を見ているような錯覚に陥る。
そして徐々に大きくなっていく教会音楽が、声が、エコーのように鳴り響きラストへと盛り上げてゆく。。

映画を観たというよりも
映画を浴びたという感覚だった。

映像と音楽をじっくり感じとりたくて、字幕なしの今作を家で再鑑賞。何度観ても素晴らしい。

マルケータの人生は変えられてしまったけれど、どちらが幸せだったのかな。。
mimicot

mimicot