ブタブタ

マルケータ・ラザロヴァーのブタブタのレビュー・感想・評価

マルケータ・ラザロヴァー(1967年製作の映画)
4.5
三時間近いモノクロ大作。
混沌とした中世ヨーロッパが舞台と、やはり思ったのはアレクセイ・ゲルマン『神々のたそがれ』
本作も突然上空にヘリコプターが飛んできたら実はここは別の惑星で『神々のたそがれ』になってしまう🚁
そのくらいもう一周回って異世界ファンタジーにしか見えない。
デヴィッド・リンチが『イレイザーヘッド』『エレファントマン』の才気と映像で『DUNE』をモノクロの大作で、オマケに制作はA24だったらこんな超凄い映画が出来てたんじゃないだろうか。
キリスト教世界とその外の異教世界は、中世に於いてはハッキリとそれこそ異世界の様な「辺土」だった。
貴族とは名ばかりの「蛮族」達。
部族同士の複雑な敵対・同盟関係や、それに介入する姿を見せない「王」…ってこれまるっきり『DUNE』だわ🪐
ビルヌーヴの『DUNE』はキレイでマトモ過ぎた。
これ程の混沌と狂気が映像叙事詩には必要。
ストーリーは何故か歌舞伎の演目『桜姫東文章』に似てると思う。
自分を強姦した、しかも一族の仇である男を愛し、そして結局最後は敵討ちに復讐に全部成し遂げて元のお姫様に戻ってしまう有り得ない話し、美少女が主役のピカレスクロマン。
マルケータが行く筈だった修道院は完全にベネ・ゲセリット。
アンドロイドみたいな修道女達が一斉に同じ動きするのは不気味。
全ての戦いが終わった時に背景に「モノクロの虹」がかかってる。
アレは偶然映ったとしたら凄い。

俯瞰映像で撮ってると思ったら急にゲームの様なPOV・主観ショットに切り替わる。
この実験的撮影がシームレスで自然で且つドラマチックな効果を上げてる。

Disney➕のSWドラマ(オビワン…)をもしこんな風に撮ったとしたら…無理ですけど😣
ホント、みんな手ブレカメラ大好きだけど其れで撮りゃ何かドキュメンタリーチックやおゲイジュツ的ドラマチックになると思ったら大間違いぢゃ⚔️

奇しくも時代も場所も全く違いながら、時を経て「居場所のない女の彷徨とそれを齎した社会への絶望と否定」という全くの同テーマ作品『WONDA』も見ねばならない。

それから小説では「〝わきまえない女”の地獄巡り」アイリス・オーウェンス『アフタークロード』も同じテーマ(だと思う)
奇しくも、これらの作品に共通してるのは発表から可成の時を経て日本ではようやく見られるという事。
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