maduu

0.5ミリのmaduuのネタバレレビュー・内容・結末

0.5ミリ(2014年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

3時間越えの長尺で、テンポも悪く、割と長めの話が4つ繋がった様な形なので観るのはしんどかったけれども、ラストのあのスイッチが入るような安藤サクラの瞬間っ!あのシーンであぁここまで観てきてよかった。って深く思った瞬間でこうゆう瞬間があるから映画観るのがとても楽しいんだよなと改めて思えた作品。

【ここからネタバレ】

ラストの話の半分あたりまでは、なんか巨匠のおっさんが撮った映画みたいだなって思って観てたんですよ。安藤桃子監督のカケラはそれはもう痛々しいほどの女性性が炸裂した作品だったので、そうゆうが観たかったんだけどなーとゆう感じで。
主人公のサワちゃんは男性社会から求められる女性としての役割をフル活用に悪用して孤独なオッさんに寄生する生活をしていて、確かな技術とカラッとしてるけど真心のあるサワちゃんに初めは警戒してたオッさん達が骨抜きになっていいようにされてしまう。でも性的な欲望を向けられたら、はいっ!そうゆう事はダメですよ〜!
っとさらりと受けながすサワちゃん。なんか強引だけど、優しさもあってハートフルな心温まる出会いと別れ。図々しく逞しく生きる女でかっこいい。やってることは、犯罪くさいけどおじいちゃん達も幸せそうだしウィンウィンでいいねぇ。
老先生との丁寧で穏やかな生活と、確かな優しさがあっても偽物の愛は本物に勝てないし、突然老いが進んでしまってボケてしまった先生の最後のテープにも涙した。
それで、次の話で最初の家庭に戻ってきてこれでなんか1つ突破口が開けてお話が終わるのかなって思ってたのだけれども!!!!!
柄本明演じる父親に、殴られてるマコト君を見るサワちゃん、ここで暴れて乱入したらまたここには入られなくなって次のおじいちゃんを探すはめになるのもあって少し躊躇っていたけど目に余るレベルになってきたので参戦するが吹っ飛ばられて口の端から血が出て、それをぬぐった瞬間に「もういい完全にどうにでもなれ。」とでもいうようにスイッチがブツンと入った瞬間の安藤サクラのかっこよさ!
今までのおっさんどもに都合の良い女であることを捨てたこの瞬間から、今までの巨匠のおじさんが撮ってたみたいな世界から完全に反転して強い女性性を放ち始めて。
しかもマコト君は実は女の子で、映画の頭から女だとは気づかなかったのにすごい強烈な違和感がマコト君にあって気持ち悪い奴だなぁって思ってたのが、あぁ女だったのかって分かった瞬間にフワっと気持ち悪さが晴れて坊主頭にも関わらず赤いワンピース姿がしっくりと見える。このキャスティングとスタイリングのコントロール神がかってるのでは!?と思いました。
そして、マコト君が男のフリをすることから解放された瞬間にサワちゃんは「100万円だ〜〜!」と車に隠されてたお金をゲット。そっからもう金さえあれば生きていけるっしょ!と用済みのおっさんに別れをつげてと2人で去っていく終わり方。
男性達は肝が冷えた人がいるかもしれないけど、女性の私からするとこんな気持ちいい映画はありません。
ここまでくるのに抑制をかけてずっと牙を隠してきたこの構成バランスめちゃくちゃすごいし、ここまで決して嘘のない誠実さをちらつかせつつ(愛や親切心も確かにあったけど)男社会で必要とされる女の役割を引き受けながらも決して心の底では男に屈服してこなかったサワちゃんとゆう女性を的確に作りあげる安藤サクラの存在感あってこその映画って感じで圧巻です。
あと奥田家、柄本家総参戦してるのもウケる。義父の顔にのっかる義娘、これをやらせる姉、それをプロデュースする父親。狂ってるぜ(褒めてる)
そんで柄本明の暴力シーンはほんとにヤバいやつ感がすごくて最高だし、角替和枝のブツシケでリアルにこうゆう家政婦いそうな感じも最高だし、浅田美代子もかっこよかった。
最後のケーキ3人で食べてるとこもいい。
あとサワちゃんが寄生する3つの家の生活ランクに的確にご飯クオリティ合わせてくるのも面白かったな。

自分の介護経験からこんな映画を作ってくる安藤桃子ほんとに恐ろしいな。
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