バナンザ

マジック・イン・ムーンライトのバナンザのネタバレレビュー・内容・結末

2.4

このレビューはネタバレを含みます

ウディ・アレンらしく合理と非合理の境界にある現実を表現しようとしている作品だった。温厚さに欠けるスタンリーの皮肉めいたセリフにユーモアがあり、ウディ・アレンが重視しているであろう知識的教養がちりばめられている。
全体的に例会の世界があることを主張するソフィーの「ウソ」をマジシャンであるスタンリーが暴くことを目的として物語が展開していく。

«人生は卑劣で残酷で短い»«感情で動けば最後は悲惨»と現実に対して悲観的な見方をするスタンリーであるが、ソフィーの超人的能力を認めると«人生の新たな可能性に出会えて興奮している»と述べている。
また«一目惚れはマジックのようなモノ»という見解に賛同していることから合理的に生きてきたスタンリーでも映画の最後では科学的に証明することのできない心の動きを信じ従い、生きる喜びを感じこれから感じていくのだろうと思う。

設定が公的な調査機関や探偵でなく、マジシャンというのが面白い。
『Irrational man監督;ウディ・アレン』では「カント曰く、真の道徳的世界とはウソの許されない世界である」と述べているが、今作では主人公のスタンリーでさえ、巧みな技術で人をだまし、喜びを与えている。そう考えると、亡き夫と交信をしたかったグレースに大きな希望と安心を与えるためにソフィーも霊界と交信することができるとウソをついたことは有意義であったと言えると思った。

ウディ・アレン自身が青年時代マジシャンをしていたことが映画の着想なのではないか。
バナンザ

バナンザ